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12月31日、一ノ瀬邸に泊まっている。 母親とお手伝いさんが、年越しそばの為に海老の天ぷらを揚げている。 手伝いたいが、何もさせてくれない。 「モデルさんにやけどでもさせたら、大変」 「聖苑は毎日、私に料理をさせてます」 「TVで見ましたよ、手際の良さに感心しました」 「恥ずかしいです」 「素敵なお母さまに、育てられたのね」 「TVを見て、泣いていたそうです」 「子供にTVであんなことを言われたら、親は泣きます」 母親の気持ちは、お金があるとか、無いとか関係ないようだ。 ゴルフから帰ってきた一ノ瀬社長が参加して、夕食を食べる。 晩酌につき合って聖苑と二人、スパークリングワインを頂いた。 「那須高原ホテルの支配人が、聖苑によろしくって言ってたぞ」 「クリスマスイヴ直前の23日に、パティシエを貸すのはちょっとって言ったくせに」 「あの夜は、本社も、ホテルも電話が凄かったそうだ」 「みんな一般人の力を甘く見すぎている」 「あのアイデアは、どこから出たんだ?」 「差し入れは金額じゃない、cloud nineのメンバーが本当に喜ぶものを考えろ。 そう、田中氏に言われました。 だから自分が差し入れされて一番嬉しいものを考えました。 あのパフェは、作ってすぐに食べないと価値が無い。 それを実現するには、あの方法しか無かったんです」 「なるほど。 反対を恐れず、最善の方法を選んだのは正解だった。 わざとホテル名を出さなかったのは、何故だ」 「今の世の中、どんなに隠しても必ず突き止められます。 だったら正しいヒントを送ったうえで、より難しくすればするほど宝探しは盛り上がります」 「人の気持ちを逆手を取ったのか、良く考えたな」 「次は、向こうの思うとおりになってしまいました。 まあ、どっちに転んでもいい宣伝にはなりますが」 「真凛が絡むと、聖苑も本気で頑張るんだな」 「真凛に恥はかかせられない。 それに差し入れする以上、喜んでもらいたいよ」 聖苑が社長らしい事を言った。 「私は何もしてないけど」俺の本音が出た。 「勝手に、周りを頑張らせる力があるんだ。 社員が真凛に会いたがってる、新年の名刺交換会は頼むぞ」
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