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「研究生のみんな、ゲネプロ頑張ってくれ。
次世代センター候補を連れてきた、一緒に見せてもらう」
開演前の円陣に妹を連れて行って、このセリフ。
頭おかしいやろ。
研究生は、プレッシャーかかりまくりだろう。
ゲネプロは、公演前に行われるリハーサルだ。
公演同様に行われるが、観客がメンバーや家族、マスコミ関係者に限られる。
「昼のリハーサルがひどかった。
プレッシャーや責任感に押しつぶされて、動きが悪かったんだ。
沙保里ちゃん効果は、どうかな?」
春木プロデューサーは楽しそうだった。
席に着くと正規メンバーに囲まれる。
「真凛ちゃん、そこの可愛い娘は誰?」
水無瀬結が尋ねてきた。
「私の妹、博多のアイドルを受けるので見学に来たの」
「博多に悪いけど、うちが貰う」千鶴が決めつける。
「たぶん、みんなみたいに踊れないよ」
「私がついてる。大丈夫」遥が言った。
ゲネプロが始まった。
1曲目からすごいパフォーマンスだ、後のことなど考えてない。
全力のパフォーマンスは、上手い下手を超越することがある。
見てるだけで、涙がでそうだ。
「お兄ちゃん、みんな綺麗だね」
「あそこに入りたいか?」
「うん、入りたい」
「ほら、みんなが一瞬で変わった。沙保里ちゃんが変えたんだ」
春木プロデューサーは自信満々だ。
妹を利用しやがって、そう思うが見事だった。
2時間の公演は、無事に終わった。
楽屋を訪ねると、研究生のメンバーはシャワーの後の様に汗をかいている。
正規メンバーの「お疲れ様」「良かったよ」「よく頑張った」明るい声が響く。
杉村莉緒が、俺に向かってやってきた。
「真凛さん、見てくれましたか?」
「リハーサルやレッスンから見てたから、公演中に涙が出た」
「よかった。ところでその娘は?」
「妹の沙保里です。博多のアイドルグループを受けたいっていうので、連れてきたの」
「プロデューサーが、次世代センター候補だって言ってた」
「研究生にハッパをかける為に使われた」
「確かにみんな一気に開き直った。負けないぞってエネルギーが出た」
「ゴメンね、騒がせて」
「明日の本公演、妹さんに見てもらいたいです」
「是非、観たいです」
もう沙保里は、夢中になっていた。
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