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「お待ちしてました」
研究生公演の受付を済ませると、fortunaのマネージャーが待っていた。
「こんにちは、妹を連れてきました」
「話は伺ってます。楽屋裏でみんな待ってますよ」
楽屋裏は、差し入れが並べられている。
正規メンバーやプロデューサー、招待客が懇談していた。
solemnityの衣装スタッフもいる。
「真凛、彼女を紹介してくれ」
加山副社長だ。
「妹の沙保里です」
「何ていう透明感だ、うちのワンピースが似合ってる」
「九州のアイドルを受けたいっていうので、見学させてます」
「九州なんかやめて、fortunaを受ければいいだろう」
「受かりますかね?」
「落とすほうがおかしい」
みんな、グルなんじゃないかと思うほどだ。
水無瀬結がやってきた。
「こんにちは」妹と握手をした。
「こんにちは」沙保里は声が震えている。
「まあ、可愛い声。初々しい真凛ちゃんだ。
本当に、可愛い」
トップアイドルに褒められて、パニックになっていた。
「他所のグループに渡さないでね」
栗栖千鶴が俺に言ってる。
「そんな才能、あるのかなあ?」
「真凛ちゃんより、fanが応援してくれる。
彼女は本物の娘だから」
「アンチされそうで、怖いよ」
「大丈夫、アンチもfanだから」
メンバーは判っていた。
結局、沙保里は2公演共に見て長崎へ帰った。
研究生バレンタイン公演は、大成功で終わった。
SNSでは、次世代センター論議が再燃して大騒ぎだ。
solemnityの衣装提供は、fanの評判も良くて話題になった。
翌週、写真週刊誌に沙保里が載った。
ゲネプロで春木プロデューサーの隣にいた写真が使われている。
俺の隣でステージを観ている写真も一緒に使われた。
「研究生公演を騒がせた謎の美少女」
「真凛ちゃんの隠し玉か?」
妹は一般人なので、顔にはモザイクがかけてあった。
それが余計に、想像を膨らませた。
翌週、俺と聖苑、山内女史の3人で長崎のホテルで家族と会った。
両親は、ガーデンズオフィスが預かってくれるならと賛成してくれた。
「実家に帰りたい」俺は両親に言った。
「パニックになるから、やめて」
田舎は世間が狭い、みんなそれなりの苦労があるようだ。
みんなで夕食を楽しんで、翌朝帰って行った。
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