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「君は、どこかの芸能事務所に所属しているのか?」 「普通の学生です」 いきなり話しかけてきて、失礼な奴だ。 「確認するけど、男だよね?」 ズケズケ聞いてくる。 「それが何か?」 「うちの社長が、君に会いたがってる」 「だったら、本人が来ればいい」 「真凛ちゃん、落ち着いて。もっと話を聞きましょ」 男は名刺を出した。 シュガー・エンターテインメントと書いてある。 田中健司という名前に、チーフマネージャーの肩書がついていた。 「今までとは、全く違うタイプのモデルを探している。 そんな中、SNSで話題になった君を見つけた。 調べてみると、渋谷によく来ている。 見かけたら連絡をくれるように、スカウト連中に頼んでいたんだ」 スマホを見せられると、20枚以上の俺の画像が出てきた。 初めて見るものが多い、背景から渋谷で撮られていた。 画像には、初めて女装で渋谷に来た時のものがある。 あらためて見せられると、恥ずかしくなった。 「実物は、画像以上に魅力的だ。 君ならいける、モデルにならないか?」 「モデルとか、嫌だ。 俺は彼女のために、こんな格好してる。 他人に見られるためじゃない」 「じゃあ、彼女に聞いてみよう。 彼がプロにメイクされて、最高のファッションを纏った姿を見たいと思わないか?」 「それは、見たいに決まってる」 おいおい、聖苑が向こうの味方になってどうするよ。 「ともかく事務所に来て、社長に会ってくれ」 「会ってもいいけど、調べる時間を頂戴」 俺より先に聖苑が交渉を始めた。 「何を調べるつもりだ」 「芸能事務所にも、色々あるでしょう。 私にも、調査する手段があるの」 「じゃあ、決まったら連絡をしてくれ。 連絡先を交換しよう」 電話番号を交換して、聖苑が握手をした。 「待ってるよ、出雲真凛ちゃん」名前がバレてる。 部屋に帰ってから、聖苑が珍しく長電話をしている。 聞こえてる内容から、実家に連絡しているようだった。 「親の会社が、シュガー・エンターテインメントについて調べてくれるって」 名刺一枚で会社を調べることが出来るって、どんな親だよ。 今まで知らなかった、一ノ瀬 聖苑(いちのせ みその)の一面が見えた。
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