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一ノ瀬聖苑が連絡をして、青山のオフィスに行くことになった。 土曜日だというのに、父親の会社から女性スタッフが同伴してくれる。 ビルの一階で、マネージャーの田中氏が出迎えてくれた。 「よく来てくれた、社長が待ってる」 エレベーターで5階に上がると、社長室に通された。 まず付き添いのスタッフが、社長秘書、田中氏と名刺交換をしている。 「君は、本物のお嬢さんなんだな」 田中氏が交換した名刺を見ながら、聖苑に向かって言った。 「親が金持ちなだけだわ」 そっけない返事をする。 隣で女性スタッフが、苦笑していた。 ドアが開いて、派手なスーツを着たおっさんが入ってきた。 「よく来てくれました。私が、社長の佐藤です」 握手を求めてきたので、仕方なく応じた。 「素晴らしい、貴方のような人を探してたんだ。 田中、詳しい話を頼む」 世界のトップアパレル企業が、アジアで新展開するカジュアルブランドのモデルを探している。 メインのモデルは決まっているが、日本、中国、ASEAN、オセアニアから相手役のモデルが選ばれる。 その日本側のモデルが、まだ決まってない。 各社がトップモデルを売り込んだが、本社から却下されて暗礁に乗り上げていた。 「相手役のモデルがこの子だ」 田中氏が資料のグラビア写真を見せた。 プラチナブロンドのショートカット、ブルーの瞳でクールな顔立ちだ。 背が高くて、手足が長い。 両親が、日本、中国、タイ、オーストラリアの血を引く多国籍少女だった。 「スタイルが良すぎない?」聖苑が言う。 「185㎝だからな」 「まさか相手役に?」 「そういうことだ」社長が口を開いた。 「晒し者になる、嫌だ」 「この業界で生きてきた、俺の読みを信じてくれ。 このプロジェクトは、普通のモデルじゃダメなんだ。」 「俺って、普通じゃないんだ」言葉には出さなかった。 「スタイルがいい子なら、山ほどいる。 日本でトップのモデルたちでも、駄目だった。 そうなると、どこにもいない個性の女じゃないといけないんだ」 そんなに力説されても、それが俺とは思えない。 「まず、テスト撮影をしよう。その結果を見て、考えてくれ」 田中氏が、提案をした。 「真凛、まずはやってみよう。お願いします」 俺より先に聖苑が答えた。
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