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7
「私のポーズを真似て、動いてください。
手足が逆でも、ぎこちなくてもいいんです、ともかく動いて」
髭面のスタッフが、声をかけてくる。
「じゃあ、始めます」
目が開かないほどのライティングの中、アシスタントの掛け声で撮影が始まった。
スタッフが動く通りに、ひたすら真似してポーズをとる。
「笑って」
「目線、こっちに」 澤田カメラマンの指示が飛ぶ。
30分くらい続いた後、休憩になって水を飲む。
もう口の中が乾燥していて、カラカラだ。
「私を見て、微笑んでちょうだい」
ドリンクのボトルを受け取った聖苑が、声をかけてきた。
カメラマンの後ろにいる聖苑だけを見て、微笑んで強い視線を送る。
ほっぺを膨らますポーズのスタッフを見ると、可笑しくなった。
思わずニコっとすると、「いいね、もっとそれちょうだい」
延々とポーズをとり続けていると、声がかかる。
「はい、OK」
これで終わりかと思っていたら、メイク室に連れ戻される。
一旦、全部落とされて、再度メイクを施されていく。
鏡を見るとブルーのメイクで、青白い顔の俺がいた。
プラチナブロンドのロングヘアが用意されて、ヘアメイクされた。
黒のドレスの背中とお腹の部分に切れ込みがあって、肌が見えている。
薄いレースの生地が重ねられて、柔らかく体を包んでいた。
仕上げに、首に黒チョーカーを巻かれて、黒レースの手袋をつけて出来上がった。
「これは、色っぽい」 田中氏が褒めてくれる。
「すごい、真凛ちゃん綺麗」
スタジオには、椅子とテーブルが用意されていた。
椅子に座らせられて、ポーズをつけられる。
「笑って」「睨んで」「怒って」「目線、こっちヘ頂戴」
カメラマンの注文が激しく飛び交う。
脚を組んで横着なポーズをしたり、テーブルに腰掛けて脚をブラブラさせた。
あまり動かなくていい分、表情を求められる。
ポーズを変えては撮影、また変えて撮影が延々と続く。
最後に、うんざりとした顔を連写されて、「はい、OK」
何とか、終わった。
「よく頑張った、いい絵が撮れたと思う」
やっと、澤田カメラマンから褒められた。
スマホを見ると、スタジオに入ってから5時間が経っていた。
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