1/1
前へ
/323ページ
次へ

「私のポーズを真似て、動いてください。 手足が逆でも、ぎこちなくてもいいんです、ともかく動いて」 髭面のスタッフが、声をかけてくる。 「じゃあ、始めます」 目が開かないほどのライティングの中、アシスタントの掛け声で撮影が始まった。 スタッフが動く通りに、ひたすら真似してポーズをとる。 「笑って」 「目線、こっちに」 澤田カメラマンの指示が飛ぶ。 30分くらい続いた後、休憩になって水を飲む。 もう口の中が乾燥していて、カラカラだ。 「私を見て、微笑んでちょうだい」 ドリンクのボトルを受け取った聖苑が、声をかけてきた。 カメラマンの後ろにいる聖苑だけを見て、微笑んで強い視線を送る。 ほっぺを膨らますポーズのスタッフを見ると、可笑しくなった。 思わずニコっとすると、「いいね、もっとそれちょうだい」 延々とポーズをとり続けていると、声がかかる。 「はい、OK」 これで終わりかと思っていたら、メイク室に連れ戻される。 一旦、全部落とされて、再度メイクを施されていく。 鏡を見るとブルーのメイクで、青白い顔の俺がいた。 プラチナブロンドのロングヘアが用意されて、ヘアメイクされた。 黒のドレスの背中とお腹の部分に切れ込みがあって、肌が見えている。 薄いレースの生地が重ねられて、柔らかく体を包んでいた。 仕上げに、首に黒チョーカーを巻かれて、黒レースの手袋をつけて出来上がった。 「これは、色っぽい」 田中氏が褒めてくれる。 「すごい、真凛ちゃん綺麗」 スタジオには、椅子とテーブルが用意されていた。 椅子に座らせられて、ポーズをつけられる。 「笑って」「睨んで」「怒って」「目線、こっちヘ頂戴」 カメラマンの注文が激しく飛び交う。 脚を組んで横着なポーズをしたり、テーブルに腰掛けて脚をブラブラさせた。 あまり動かなくていい分、表情を求められる。 ポーズを変えては撮影、また変えて撮影が延々と続く。 最後に、うんざりとした顔を連写されて、「はい、OK」 何とか、終わった。 「よく頑張った、いい絵が撮れたと思う」 やっと、澤田カメラマンから褒められた。 スマホを見ると、スタジオに入ってから5時間が経っていた。
/323ページ

最初のコメントを投稿しよう!

48人が本棚に入れています
本棚に追加