プロローグ

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プロローグ

伊王 蒼海(いおう あおい) 子供の頃から、可愛いと言われることが嫌だった。 母親譲りの丸く優しい顔立ち、ストレートでサラッとした髪、大きくてクリッとした瞳。 すぐ上に姉がいたので、お古の子供服が赤やピンクの可愛い服ばかり。 また良く似合ってたので、親も喜んで着せていた。 幼児の頃の写真は、どれも姉と妹にしか見えない。 中学に入学して第二次成長期を迎え、声も低くなり、多少身長も伸びた。 顔も丸顔から玉子型に、少しシャープな感じに成長した。 だが周りの野郎達は、俺よりもっとデカくなり、ゴツく、男になっていた。 俺は置き去りにされた虚しさを感じて、焦っていた。 心に鬱積したものを抱える自分に転機が訪れたのは、高校生になって吉村 亜衣梨(よしむら あいり)と知り合ってからだ。 群れる女子の中で一人を好む彼女と、俺は自然と話すようになった。 「男らしさは外見じゃない。内なる自分と闘う蒼海は、十分に男子だよ」 「蒼海みたいに、可愛くなりたい男子もいる。 知らないでしょうけど、君に憧れてる後輩だっているんだ」 彼女の言葉が魔法のように、俺を縛っていたコンプレックスを溶かしてくれる。 俺たちは、当然のように恋人同士になった。 ある日、彼女に誘われて家に行くと両親は不在だった。 親戚の結婚式に夫婦で出席するため、長崎市内に行っている。 彼女の計画に巻き込まれて、俺たちは初体験をした。 この経験で、俺は周りを見る視点が変わった。 俺より男らしくて、モテてもいい奴が童貞を拗らせている。 たかがsex、でも高校生にとっては大きな差だった。 俺は自分という現実を受け入れて、素直に成れた。 それを亜衣梨が肯定してくれる、それがもっと自信になる。 成績が良かった彼女に追いつこうと、自分も頑張った。 お陰でまずまずの成績が取れるようになり、さらに自信がついた。
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