隣の席の野上くん

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 部活を終えて外に出ると、自転車置き場で野上くんが待っていてくれた。  すっかり薄暗くなった堤防沿い。夕焼けの少し上にハッキリと輝く一番星を見つけた。自転車を引っ張りながら並んで歩く帰り道。  お互いに同じことを考えていたことが分かって、笑ってしまう。  わざと教科書を忘れたフリをしていた野上くん。  あたしと三年間同じクラスなこと。  バスケ部とバド部の練習場所ですれ違ったり、話をしたりしたこと。  そして、隣の席になれたこと。  野上くんも、奇跡だと思ったらしい。  あたしが、野上くんの机の中を覗かなかったら、野上くんの気持ちには気が付かなかったのかも知れない。  今度はこの気持ちを、ちゃんと伝えたいと思った。  隣の席でいられるのも、今だけだから。  だったら、もっと近くでたくさんたくさん、これからも話をしようね、野上くん。   ーfinー
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