1.狭山家

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1.狭山家

 (これって…?)  狭山隆弘がそれを見つけたのは、庭にある古い蔵の中だった。狭山家は、ここ原村の地に500年も前から暮らしている。  原村は、西に鶴賀岳、東に岩見山、その間を南北に細く須曽川が流れている。最近では、私鉄の特急が停まることになったこともあり、岩見山の麓に、大規模なニュータウンを建設中だ。  500年前といったら戦国時代で、今でこそ狭山家は農家だが、歴史を遡ると、先祖は武士だった。蔵はさすがに明治時代のものだが、その蔵の中には、甲冑が残っており、大広間には刀と槍が飾られて、お殿様から拝領したという茶器まである。  夏休みの課題で、自由研究があり、隆弘はそのネタを探しに蔵に入ったのだった。小さい頃は、よくかくれんぼをしたな、と呑気に思い出しながら。  卵を割れば、その場で目玉焼きが出来るような猛暑だが、蔵の中はひんやり涼しくて気持ちがよかった。古そうな箱の中身を片っ端から覗いていたら、古記録と思われるものがあり、それを開くと絵が描いてあった。  そこにはまるで、磔にされたキリストたいなポーズの人型に合わせるように、鳥が翼を広げている。周りに色々文字が書いてあるが、何が書いてあるのかまったく分からなかった。  かろうじて、記録したのであろう日付で、「天文十一年六月二日」とだけ読めた。古記録は、その後も日付と絵と文字が続いていた。
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