山田くんの新しい星

1/5
前へ
/8ページ
次へ

山田くんの新しい星

「・・ここは?」 俺は、目を覚ました。  前に、夏休みの宿題から逃れようとして、記憶喪失のふりをしたことがあったが、ここは本当に、どこだか分からない。壁が丸くて妙に狭くて薄暗い。傍に誰か立っている。 「誰・・?」 「山田・・気が付いたか」  聞き覚えのある声だった。 「先生・・?」  担任の先生だった。 「先生、ここ、どこ?」 「山田・・ここは救命ポッドの中だ」 「きゅうめいぽっど?・・なにそれ」 「他の人達は他のポッドに乗った。これに乗ったのは俺たちだけだ。ポッドの生命維持措置が切れる前に、人が住める星が見つかればいいんだか」 「他の・・え・・?」 「地球に隕石が衝突して・・・俺たちは運よく地球から脱出できた」 「な、なに・・それ・・なんの話?」 「地球は、滅んだんだ」 「いや・・いやいやいや・・何それ。そんなわけ」 「・・・そうだな。お前は、ずっと眠ってたから・・何も見てない。地球がどうなったか・・」 「え・・」  先生は、いつも落ち着いている。今も普段と余り変わりないように見える。けれど、いつもより、表情が暗かった。 「・・・・ほんとに・・?」 「ああ・・」 「そんな・・・」  そう言われても、やはり信じられない。 「お前の・・」 「え」 「夏休みの宿題に、地球の命運を左右する暗号が紛れていたんだ」 「は?」 「お前は、ずっと夏休みの宿題から逃げて手付かずだったから、暗号に気付くのが遅れたんだ」 「え・・・?」 「お前の記憶障害、あれは宇宙人がお前の脳に接触していたからだったんだ」 「え?!あ、あれは、俺の・・」 「ん?」 「え、あ、いや・・・」 え?そうなの? え?どゆこと・・? 「すまなかった」 「え?」 「お前の異変にもっと早く気付いていれば、こんな事には・・」 「え・・だって先生の所為じゃ・・ない」  むしろ、俺のせい・・・?俺が、夏休みの宿題からずっと逃げてたから・・・ 「先生・・」 「山田・・」  先生は、そう呟くと、急に苦しそうに壁に手を付いた。そのまま、ずるずると崩れ落ちた。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加