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これからも、ずっと…
「どうしたの?」
ふと立ち止まり夕空を眺めた俺に、隣を歩く君が声をかける。
「いや、ちょっと昔を思い出していただけ」
久しぶりに聴いた夕刻を知らせるチャイムが、あの頃の情景とともに、あの時の二人を鮮明に思い出させる。
何故か少し物悲しい気持ちになってしまうのは、あの頃と同じ懐かしいこのチャイムが、あの時の俺達の甘く切ない恋心も一緒に連れてきたからだろうか。
「さあ、帰ろうか」
今はサヨナラの合図ではなく、ただいまの合図になったチャイムを聴きながら、いつもと同じ帰り道、いつもと同じ夕暮れの刻、いつもと同じ、今までもこれからもずっと変わらず隣にいる君に、あの頃と変わらぬ想いで微笑みながらそう告げた。
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