44人が本棚に入れています
本棚に追加
/54ページ
この日は二人で、プラネタリウムに来ていた。
彼がよく空を見上げているので、きっと星も好きだと思い私が提案したのだ。季節に合わせて、夏の星座と秋の星座がメインになっている。
並んで座席に着くと、夏の星座の中で一番有名なカシオペア座についての説明が始まった。
『カシオペア座は、五つの星がアルファベットのWの形に並ぶ星座で、星の明るさが均一なことから、カシオペアは星の知識がなくとも非常に見つけやすい星座です。その周辺には天の川が広がり、美しい光景を見る事ができます。そして、ギリシャ神話におけるカシオペアは……』
説明が神話の内容になり、星座の由来がそこからきている事を知る。不意に、噴水広場で聞いたヒスイさんの黒が好きな理由の話に出てきた黒天使の事を思い出した。
ーーあれも、星座にまつわる神話なのかな?
天使なのに全身黒を身にまとった、黒天使の物語。
ーー真っ直ぐな信念を示す。なんだか、ヒスイさんのことみたいだな。
私は星座から、そっと視線をヒスイさんに向けた。
真剣に星座を見つめる彼の横顔が素敵で、そこから目が離せなくなる。こんなに暗闇の中にいるのに、輝きを感じてしまう。彼の横顔に、見惚れずにはいられなかった。
「澪。俺じゃなくて、あっち」
ヒスイさんがプラネタリウムの夜空を指差す。見つめている事に気づいていないと思っていたのに、思い切りバレていた。
「はい……ごめんなさい」
私が再び夜空を見上げると、星座は既に秋のものに変化していた。
最初のコメントを投稿しよう!