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一番星を見つける。
「空、見上げてご覧。
今日は星が沢山見えるよ。
…ん?あれ?あれはね、カシオペアって星。
あの星が好きなの?
そうか、なら、楽しみにしててね」
今日も俺は空を見上げる。
父が買ってくれた望遠鏡…じゃないけれど。頑張って働いたお金を、星を見る為に使った。父が教えてくれたこの空が、俺にとっての大切な宝物。
「いいかい?人はね、自分じゃ理解し難いものに、惹かれていくんだよ。この宇宙はまだ人間には到底考えつかない沢山の秘密が隠されている。秘密が分かったら、また秘密が見つかるんだ。
私はね、この空が大好きなんだよ。」
雨の日は、家でプラネタリウムを引っ張り出して、晴れの日は、ベランダに出て、ずっと星を見ていた父。俺に話すその姿は、興味が底を尽きない少年のようだった。
「父さん、持ってきたよ」
「また持ってきてくれたのか。有難う」
ベッドから動けなくなった父。だから、俺は、写真を撮る。拡大された星、肉眼で見える程度の星空、シャッターを開いて弧を描くもの。全て、この美しさを教えてくれた父の為。この魅力に溺れた俺の為。
「人はさ、星になるって言うだろ?」
「そうだね」
「なら、私は、この中で一番輝く星になろうと思うんだ。絶対気づくだろ?」
俺は、いつか必ず、この星々の輝きの中で、唯一愛する星を見つける。
それは、唯一、この空の下で愛した人の灯火だから。
それが、宇宙規模の親孝行だと願っている。
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