プロローグ

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プロローグ

1945年3月10日 ・・はあっ・・ ・・はあっ・・ ・・はあっ・・・ 幼い 文の手を引き 躓きそうに成った 文を背負って 声を掛けた もう少しだからな 小さな顔が頷いて来る 空にはB29爆撃機が 悠々と爆弾と焼夷弾を撒き散らせ 一夫は妹の文を背負い 火の中を 走っていた もう少し走れば 公園へ 文 大丈夫か 声を掛け 涙を堪えていた 母親が火に巻かれながら 一夫に 文を頼む 母の叫び声を背中に 文の手を引き 此処を抜ければ・・・・  一夫は 立ち止まった 路地の向こうから 炎が まるで獣の様に口を開け 迫って来る 後ろからも 炎が迫り 文を抱きしめ 蹲った 二人を炎が押し包んだ 炎に巻かれる中で 一夫は ・・・・ごめん 文・・・・・ 誰にも気づかれず 二人は業火に包まれていた たゆ たゆ 白い朧な意識が 漂い揺らめく中で ・・・私は・・・・ ・・・私は・・・・ ・・・私は・・・・ ・・・まって いて・・・ 一つの 朧な意識は 足元の大きな穴の中へと 飛び込んで行った・・・・
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