ずっと欲しかったもの

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「ふぁ……あぅっ」  稀一の指がみっちりと埋められ、中を引き伸ばされていく感覚にお腹が熱くなる。稀一は身悶える詩音の様子を見ながら、中の指をゆっくりと出し挿れしてきた。とろとろに濡れているからか、痛みなく呑み込んでいく。 「あ、やぁあっ」  稀一の長い指が内壁をなぞる。より深いところに触れられて、愛液がとろりとあふれて彼の指を濡らした。 (やだ、私ったら……)  こんなにも感じていいものなのだろうか。初めてなのに、痛いどころか稀一の愛撫に悦び喘ぐ。そんな自分があまりにも淫らに思えて、どうしたらいいか分からなかった。  彼はとても楽しそうではあるが、本心ではどう思っているのだろうか? 途端に不安になって詩音は首を横に振って、快感を散らそうとした。が、抵抗むなしく稀一に恥骨の下あたりをなぞられて体が跳ねてしまう。 「やっ、だめぇっ」 「ここ好きなんだ?」  彼はいいものを見つけたような表情で、そこを執拗に擦り上げた。 (やだやだ、変……!)  詩音は手を伸ばして、彼の手を掴み制止しようとした。そこを触られると、何かがせり上がってくるのだ。詩音の意思とは裏腹に膣内は彼の指をぎゅうっと締めつけてしまう。それを分かっているのか、彼の指の動きが変わった。  性行為を連想させるような動きで奥を穿つ稀一に、詩音は耐えきれない快感に啼きながら掴んでいる彼の手の甲に爪を立てた。 「んぅ……っあ! やだ、やだぁっ……これ無理っ」  処女なのに稀一の指で気持ちよくなってしまうのが怖い。彼にやらしい女だと幻滅されたらどうしよう――そう思うと恐ろしくてたまらなかった。  詩音は稀一から与えられる快感から逃れたくて、何度も何度も首を横に振った。すると、指が止まって額や頬に優しいキスが落ちてくる。 「悪い。痛かったか?」 「っ……ぅうっ、い、痛くないの……怖いの。私、初めてなのに……こんなの、だめなの……」  泣きじゃくりながら縋るように稀一に抱きつくと、「大丈夫だ」という囁きと共に抱き締め背中をさすってくれる。彼はとても優しい表情(かお)と声をしていた。 「詩音。ダメじゃないよ。気持ちよくなることは悪いことでもないし、怖いことでもない。絶対に君を傷つけたりしないから、身を任せてほしい」 「……幻滅しない?」 「幻滅? なんで?」 「だって……私処女なんですよ。初めては痛いものなのに、私ったら気持ちよくなってしまって……。私、やらしい……ひゃあっ!」  その瞬間、指が深くなる。詩音が目を見開くと、稀一が笑った。その満面の笑みになぜだか肌が粟立つ。 (稀一さん?) 「好きな女性(ひと)が感じてくれているんだ。喜びこそすれ幻滅なんてするわけないだろ。最高じゃないか。俺はやらしい詩音をもっと見たいけど? まあ、初めてだから戸惑うよな。慣れるまで毎日してやるから安心するといい」 「え? ま、まいに、ち? ひあっ、あっ……やあっ……ま、待って……ん、んんぅ!」  突然口内に舌を捩じ込まれ、上も下も彼でいっぱいになって、呼吸もままならない。苦しいはずなのに、体は彼がくれる快感に染まっていく。 (まるで食べられてるみたい……)  目を閉じて彼からの荒々しいキスを受ける。ギプスから覗く指がシーツをぎゅっと掴んだとき、花芽がくにゅっと押し潰された。 「――っ!!」  思わずシーツから手が離れて、彼の手を制止するように左手を伸ばした。すると、また花芽を押される。 「ひうっ!」 「こら。左手を動かすなと言ってるだろ」 「で、でも……ひゃぅ、ぅ……す、少し、くらい……へ、平気だわ……う、動かさない、ほうが……あとあと、良くなっ、ひゃあぁんっ!」  彼の言葉に言い返すと、お仕置きだと言わんばかりに中に埋められた指の数が増やされ、激しく出し挿れされる。  入り口から奥までみっちりと引き伸ばし、花芽までも嬲られる。  強すぎる快感から逃げたいのに逃げられない。詩音はシーツの上でただただ踠いた。 「あっ、ああぁっ……も、もぉだめぇっ! ――っ!!」  目の奥で明滅を繰り返し、体がふわりと浮く。独特の浮遊感を感じて体がベッドに沈むと、稀一のキスが降ってきた。 「はぁ、っ、はぁ……き、稀一さんの、意地悪っ」  胸を大きく上下させながら荒い呼吸を繰り返す。詩音が不満げに彼を睨むと、彼が笑った。 「意地悪だよ。今更気づいたのか?」  喉の奥で軽快に笑って、目尻に溜まる涙を指で掬い取ってくれる。 「今までは意地悪じゃなかったです」  まるで優しかった彼が豹変したみたいだ。ベッドの中だけ意地悪で獰猛な捕食者に――  詩音が戸惑っていると、稀一が詩音の脚を掴んで大きく開かせた。 「きゃあっ! なにするのっ?」 「なにって……続きだけど? 詩音、言っておくがまだ終わりじゃないぞ」 「~~~っ!」  そうだった。彼のものを受け入れなければ終われない。詩音は自分の脚の間に陣取る稀一を見ながら、赤い顔をさらに赤く染めた。  だが、あんなにも激しい絶頂を味わわされたばかりで、大丈夫だろうか。  詩音が不安げに稀一を見ると、彼は手早く避妊具をつけて、詩音にキスをした。そして、ぬるぬると擦りつけてくる。 「あっ、ああんっ」 「詩音、力を抜け。痛くないようにゆっくりするから」  愛液を纏いぬるついた屹立が蜜口にくぽっとはまる。その感覚に詩音が息を止めると、宥めるようなキスがいっぱい落ちてくる。  その途端、彼のものがゆっくりと入ってきた。 「あぁっ!」 (痛い……!)  圧迫感を感じたのと同時に痛みが襲ってくる。詩音が顔をしかめると、稀一がなだめるように何度も「大丈夫だから」と言ってキスをしてくれた。  二人の手を重ね合わせて痛みから気を逸らすように稀一のキスに集中していると、彼が小さく腰を揺する。その動きを何度か繰り返されるたびに詩音の体は稀一を呑み込んでいく。 (すごい。奥まで入ってる……!) 「詩音、入ったぞ。よく頑張ったな」 「嬉しい」  頭を撫でられて、詩音は彼の胸にすり寄った。  この痛みが彼と一つになれた証なら、それすらも愛おしいと思う。 (ああ、稀一さん。嬉しい。これで貴方のものになれたのね)  彼と一つになれた。ずっと望んでいたことが叶って、詩音は幸せを噛み締めた。
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