出会いと別れそして卒業

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1 小説がまったく書けなくなってしまった。書きたいという願望はあるのにまた書かなければいけないという責任さえ感じているのに。ああ困ったものだ。暇さえあれば動画配信アプリポコチャを開いている。それかギャンブル  ポコチャのライバーであるコジコジには沢山の勇気をもらった。ギャンブルも一時やめること会出来た。だが今はどうであろうか何にも手に着かずコジコジの配信時間以外は近くにあるパチ屋に足を運ぶ毎日。コジコジの配信が始まってもスロットを打ってる時がある いっときはドラゴンの清水の清水と呼ばれトップリスナーに君臨していたこともある。アイテムを投げることに喜びを感じていたこともある。今は課金するお金をすべてギャンブルで溶かしてしまっている。俺の手元に入ってくるお金は市から支給される生活保護費だけだ。アイテムを投げてた頃は働きにも出ていた。  苦しい本当に苦しい。今の生活から脱却しない事には何も始まらない  コジコジは名もなき美少女コジコジからアカウントを変えああコジコジでリスタートをきっている。俺はアイテムを以前ほど投げられなくても配信だけにはちょくちょく顔をのぞかせていた。ギャンブル依存と同じでポコチャ依存症を患っていた。  投げたくても投げれない自分を振り返ると究極の自己嫌悪に陥った。  コジコジは復帰してからしばらくすると最高ランクであるS帯まで上がったがその後の維持に苦しみA帯にランクを落としその後ももがき苦しみB帯にまでランクを落とした。  それでも辞めずにBARで働きながら配信は続けていた  イベントにも参加して今はA帯復帰を試みている。  俺は何をしているんだろうか? 頑張ってパソコンと向かい合ってもスロットが打ちたくて打ちたくて仕方ない。完全にギャンブル依存症に陥ってしまった。 2  コジコジのリスナーには個性あるネーミングのリスナーが多々いた。  俺は金のない現状を配信で訴えていた ――いいよシミズ投げれなくても。でも配信が終わるまではいてね  優しいコジコジの言葉に心が打たれる ――働き始めたら少しは投げれるから 全くのデタラメであった。働くことが大嫌いな俺に働く気などサラサラなかった。  たまに解体屋の仕事が入るがそれはざらで仕方なく仕事に行ってるだけだ。  日当一万円。それが安いのか高いのか俺は知らない。お金がないというのに働くのが嫌で嫌で仕方なかった。金に困っていながらお金のために働くことが嫌なのだからしょうもない。 まして解体屋の仕事は過酷な肉体労働である。五十三にもなる俺の身体はあちこちがたがきていて仕事に出るたび足腰のどこかが悲鳴をあげていた。  貧乏でもいい。小説家になるのが夢の俺は果たしてその努力をしてたであろうか? 何にもしてなかった。 毎日読書をして映画を見てまた小説を書くという現実から目をそらしていた。  こんなんではいけない。今の現状を打破しなければいけない。ギャンブルなどしていても所詮勝てるはずもなく月末になるといつもぴいぴいであった。保護費の支給が毎月三日。 支給されるとすぐさまパチスロを打ちに俺は出かけていく。  一万円の金などすぐになくなる。まして俺は日に五万円近く負ける日もある。  食生活はそれはそれは乏しいものだった。二日に一食の生活。それも卵ご飯。米の上に卵を一個のせるシンプルそのもの。  俺はなんでギャンブルが辞められないのであろうか? パチスロを辞めたいと思いながらその思いを裏切るもう一人の自分がいる。  ああ俺はこのまま何も残さず一生を終えてしまうのであろうか? 虚しい。寂しすぎるこんな生活  コジコジも配信を辞める事を真剣に考えたと聞いている。BARで働き週に一回はスナックで働いていて。なのに配信は辞めずに頑張っている。彼女の原動力は何なのであろうか? 配信が好きなのであろうか?   配信にはランクがあってライバーは常にメーターと闘わなければならない。マイナスを取った日にはメンタルもだいぶやられるという  俺も配信をしていた時期はあったがそれで食べてるわけではなかったのでメーターを気にする必要などサラサラなかった。  コジコジはたぶん配信が好きなのであろう。そうに違いない。コジコジもいずれはポコチャから身を引くことに違いない。その時俺は何をしているであろうか?  当たり前の毎日が当たり前でなくなる。その日はいつになろうであろうか?   コジコジはなぜそれほどに配信一本で生活したいのであろうか? 働くことが何より嫌いな俺にはとてもじゃないが理解できない。配信は思っている以上に疲れる。  いずれは来るコジコジとの別れを思い浮かべてみる。とてもじゃないが思い浮かべることができない。そんなの嫌だ。 3 39TTYとの出会いがあったのもコジコジの配信であった。あまりよくは知らないがコジコジの配信のトップリスナーの一人である。暇な時に自らもメーターを気にしない配信を行っていた。俺は興味がありTTYの配信にも遊びに行った。アウトロー的な雑談配信をしていた。  配信に遊びに行ったおかげかTTYとも仲良くなれた。 ――茶太郎おはよう 配信に顔を出すとTTYが声をかけてくれる。以前は清水弘通と本名で登録していたがTTYと知り合った頃はアカウントを茶太郎に変えていた。 ――魚卵が他枠で48K取ったんだって。Kとはコアのことで1K取るのに三時間の配信の視聴に100コイン投げ銭しなければならない。  やや複雑な説明になるが三時間と三日間の視聴に100コインは百円であるがそれは条件1である。金額にして1000円の投げ銭をすると条件2ですぐに1Kになることができる 後は時間の経過を待つだけで5Kまで黙っていても上がる。48Kになるには金額にして25万円の投げ銭をしなければならない。  魚卵もコジコジの配信のリスナーでそこそこアイテムを投げてはくれている。ただかまちょで他のリスナーからはあまり好かれてはいない。  TTYの配信で俺は今の現状を訴えた。生活するのにもお金がなく生活はぎりぎりの状態であることを。そしてあろうことか借金の申し込みさえしてしまった。一口10万円なら月一割で貸してくれるという。俺は五万あればよかった。そのことを告げると五万ならトイチでもいいですかと言われた。俺は歓喜にあふれその条件で貸してくれと心から切願した。 借金の申し込みをして三日後には俺の口座にお金が振り込まれていた。ああ助かった。今月は何とか生活ができる。時は九月の暮れであった。タバコもやめなければいけない。ましてやギャンブルは絶対にしてはならない。 仕事は警備保障会社の待機要員であった。急遽休みが出た場合に変わりに出勤するものである。日当はは少し割高の一万二千円。その代わりいつ仕事が入るかわからない。 TTYの気持ちが嬉しかった。だというのに借りたお金は全てスロットで溶かしてしまっていた。ああ俺は何をしてるんだ。ギャンブル依存がこれほど酷いとは。 10月3日になった。生活保護の受給日である。俺は朝一番に起き起きて近くのコンビニに金をおろしに行った。その金をすぐさまTTYの返済に充てた 4  ポコチャのリスナーは何をしてるかわからないものが多い。ただ一概にいえるのはみなまっとうに働いてるという事だ。ポコチャには依存性がある。俺もそのうちの一人なのだからそれはよくわかる。俺はコジコジにたくさんのものをもらったそれは物質的にではなく目に見えないより多くのものをだ。ポコチャを通していろんなリスナーとも親交を 深めてきた黒幕にTTY女では歩くホスホスSNSを通じて多くのリスナーと出会い色々と表では聞けない事実も聞いた。何人のリスナーと配信の外で出会うことができたであろうか? コジコジはオフ会もしたのでその時は配信に遊びに来る多くのリスナーと接することができた。黒幕にハヤト、パトリックに歩くホスホス、とりたてんに魚卵、かおるくんにスマイルコジコジ人生。他にも多々。皆それぞれ個性あふれるキャラクターだった。  親友である和幸ともオフ会で15年ぶりの再会を果たした。和幸のハンドルネームは金さん。俺も和幸も昔やんちゃをしていて極道の世界に籍を置いてたことがある。そのことも配信で知らせてあったため恐れられることも仲間外れにされることもなかった。  オフ会が行われたのは年が明けた一月の事だった  オフ会の模様は配信でも実況中継された。黒幕の投げる花火が飛び交う。花火は1080コインと以外に高額だ。それに宇宙こちらは5555コイン金額にして5555円。同じくかぼちゃの馬車こちらも5555コイン。オフ会はそれはそれは大いに盛り上がった。和幸までか ぼちゃの馬車を投げていた。  その頃の俺はギャンブルを辞めていたから何ら障害もなくオフ会に参加することが出来た。  オフ会の費用は一次会が一万円。二次会が五千円。俺の住んでる広島から東京に行くまで会費を含めると十万円かかった。その頃の俺はギャンブルを自らに厳禁してたし行きの旅費は和幸が払ってくれたのでお金の心配をすることがなかった。 5  コジコジとの思い出はそれなりにある。そんなコジコジが突如として配信を辞めてしまった。辞めた時のランクはA2  ポコチャのランクはE帯から始まりD、C、B、A、そして最高ランクのS帯となる。  E帯からD帯には簡単にランクアップできるがD帯からは、またややこしくD1、D2、D3とランクアップできてC1となる。またS帯に限っては1~6まで。最高ランクがS6となる。余談になるがS6にもトップ200。トップ50もあってライバー同士を運営側が競わせるシステムを取っているのではないかとうがった目で見てしまう コジコジが配信を辞めてしまい俺の心はぽっかり穴が開いてしまった。そのころだろうか俺が再びギャンブルに手を染めだしてしまったのは?   コジコジに恋をしているわけではなかった。それだけは断言できる。なぜこれほどまでにコジコジに魅了されてしまったのであろうか? 自分でもよくわからなかった。  恋とは違う。たぶん愛なのであろう。頑張っている姿を見てると応援しないではいられない。 ――コジコジ俺の名前を言ってみろ  少し間がありドラゴンの清水と答えが返ってくる。俺はコジコジが言い終わらないうちに3333の高額な雷龍、ドラゴンを投じる。その時の歓喜あふれる喜ぶ顔が見たかった。 コジコジはもう配信はしないのであろうか? 俺はギャンブルに身を投じてしまった。  コジコジが配信を辞めてから完全なギャンブル依存性に陥った。  それでも他のライバーの配信にはよく遊びに行った。  主に男性ライバーの配信ではあったが。 ――こんばんは ――来てくれてありがとうございます。 ――コジコジもう復帰しないんですかね コジコジのリスナーでもあるライバーのぱいせんは言った。 ――もうポコチャ卒業しようかな俺 ――そんな寂しいことは言わず。たまにでいいので俺の配信に遊びに来てくださいよ  ライバーであるぱいせんに返す言葉がなかった。  コジコジは沈黙を貫き通した。 6 コジコジが配信を辞めて俺は自ら配信を始めることにしてみた。配信を始めて思ったことは思ってた以上に疲れるという事だった。それに腹も減る。そういえばコジコジは配信中いつも何かしら食っていたことが思い出される。なぜこれほどまでに俺の頭をそして心をとらえて縛る。  俺の配信は反社会的勢力と刑務所での出来事などを配信するアウトロー的な配信だった  何気に配信初月のコア人数は48人とまずまずの滑り出しだった。  ただ話す内容が無くなっていたのも一つの事実である。 月がたつごとにコア人数がミルミル減っていった。主に配信に遊びに来るのはコジコジの配信のリスナーが多数を占めていた。D3まで一気に昇りつめたがメーターはそこで停滞しD2までランクを落とし配信をするのが嫌になってしまった。そんな時あろうことかコジコジが配信に遊びに来てくれた。配信を辞めてしまい4ヶ月が経とうとしていた。 ――コジコジ元気にしてるか ――うん元気だよ ――配信はもうしないのか? ――もうちょっとまってて今は準備中だから  コジコジの配信に遊びに行ってたリスナーが次々とメンションを打っている。 メンションとはコメントしたリスナーに直接話しかけることだ ――整形しちゃった コジコジが言った  俺を含め他のリスナーはびっくりしていた様子だった。  素のコジコジはどこか芋っぽくかわいらしかったのに。  配信は近いうちに始めるという  俺は歓喜よろこび溢れた。  その頃の俺は配信をしていたこともあってギャンブルをしないでいられていた。 7  コジコジが帰ってきた。名もなき美少女コジコジからああコジコジとアカウントを変え  俺は配信初日に遊びに行った。  E帯からのスタートだったからアイテムを投げる必要はなかった。それでもアイテムは飛び交う。これがコジコジの実力だ。  半年のブランクを感じさせない勢いのある配信であった。  コジコジが配信を始めたこともあり俺は自身の配信を辞めてしまった。  整形したコジコジは以前に比べ奇麗になっていた。でもどこかちがった。違和感があった。なんだこの違和感は? その日の配信は最後まで付き合った。  整形したという事実はもちろん配信でもカミングアウトしていた。それと同時に整形途中の経過も動画にアップしていた。  あららそんなもんリスナーに見せる必要はないのに。  俺は配信当初からのリスナーではないのでよく事情が吞み込めなかった。  コジコジはなぜ整形などしたのであろうか? フォローワー数7000人もいたのにアカウントを変え新たなスタートをきったのであろうか? 疑問しかなかった。  名もなき美少女コジコジは配信初日から怒涛のでS4まで昇り切ったとぱいせんから聞いた。俺が初めてコジコジの配信に遊びに行ったときは確かにS帯であった。ただファミリーに参加していなかったのでS帯のどの位置にいるかがわからなかった。  昼間から酒を飲み狂喜乱舞の配信をしていた。だってそうだろう俺が初めて遊びに行ったとき清水と呼び捨てにされたのだから  ただ罵詈雑言をリスナーに浴びせかけてばかりいた。  コジコジはエンターテイナーであった。支離滅裂な配信に黒幕の投げる花火が止まらない。それを追いぱいせんや孔というリスナーが高いアイテムを投げる ――追いハートキラコメを投げろ? 投げてだか忘れたがかすれたハスキーボイスが怒鳴りつけるように連呼し続ける。  追いハートとは高いアイテムを称賛する意味合いをかけてリスナーが投げる一個一円のアイテムである  都市伝説かなにかは知らないが追いハートにキラコメを打つとメーターが上がるという説がある。キラコメはシメジというアプリからダウンロードするきらびやかな定型的なきらびやかなコメントである。 8 アカウントを変えればデビュー初日となって運営側のポコチャのサイトの注目に乗る コジコジは整形をして新たにスタートをきりたかったのかもしれない。  可愛くなった私を見て? たぶんそんな気があったのかもしれない。でもアカウントを変える必要性などあったのであろうか? 名もなき美少女コジコジはフォロワー数7000人を超えていたんだぞ。  確かに俺が見た配当初の頃より勢いが欠けていたのは事実だ。時に垣間見るコジコジの顔がそれを如実に物語っていた。  ライバーそれは配信する側の人間を差すが誰もがメーターで病むと言われている。  今日はプラマイとれるかな? マイナスにならないであろうか? 帯が上がれば上がるほどその葛藤や不安が大きくなることも。  俺はコジコジの選択に否定的であった。以前のアカウントの名もなき美少女コジコジのままフォロワー数を増やす手立ては何かしらあったはずだ。だが俺は自らの意見を口にすることはなかった。 9 コジコジが配信をリスタートして俺は配信には遊びに行くもののアイテムをまったくというほど投げなくなってしまった  自らの配信を辞めていたのだから少しは投げることができたはずだが、またここにきてギャンブル依存症を発してしまったのである。それにリアルな現実ともむきあってしまった。  アイテムを投げることは誰かのためにはなっている。そうそれはコジコジの生活のためにはなっている。多少ではあるが。  スロットで負ける日が続いていた。あまりにも大負けするとメンタルがやられコジコジの配信にも顔を見せなくなった。  コジコジの配信のおかげでギャンブルを辞めることができたというのに今はどうであろうか? ギャンブル依存から抜け出せない。  食生活が二日に一度の生活に変わる。飯代までギャンブルに注ぎ込む。紛れもなくギャンブル依存症と言う名の病気だった。  過去を振り返れば俺はコジコジの配信でレインボーに三度なったことがある。  ポコチャはコアによってアイコンの色が変わる。簡単に説明すればコアで水色10Kで青20Kでピンク30Kで赤、40Kでレインボーになる。レインボーになるには金額にしてやく10万円の課金が必要である。  過去の話ではあるがコジコジの配信に魅了され応援したいという気持ちがあるにはあったのだ。それがどうだ。今は毎月1Kの始末。よくて2K  ああギャンブル依存症から脱却したい。一度パチンコ店の喫煙ルームである張り紙を目にした。  パチンコは適度に遊ぶ遊戯です。次の条件に当てはまったらまずは電話してみましょうとのうたい文句がありいくつかの事項が書かれてあった。そのすべてに俺は当てはまった。  俺はいち早くその電話番号をスマホに登録した。登録したものの電話する気にはなぜだかならなかった。  自分自身をコントロールできない俺はほんまもんのあほだった。来月の支給日まで三万円で生活しなければならない。まだ今日は10月の五日であった。なぜ金がないかと言えば39ttyに十日で一割の金を借りその返済に支給日である三日に振込手数料込みで55500円でを返済したからである。その残り30000円を持って俺はあろうことか雀荘に麻雀を打ちにいった。三時間ほど遊んだ? であろうか二万円の元が13500円になって返ってきた。6500円の負けである。11月の支給日まで残金13500円。  どこにこんなあほがいるであろうか? もう何もかもが絶望的であった。  そんな落ち込んでいた時である人材派遣の会社からの解体屋の仕事の依頼があったのは働くのは嫌で嫌で仕方なかったが背に腹は代えられない。俺は仕事に出ることを承諾した。 三日で仕事は終わった。日当一万円だから3万円の収入であったこの収入は価値があった。タバコもやめようと思ったが辞められずぷかぷかぷかぷか吸っている。 だがいずれはタバコも辞めたいと思っている。果たして辞められるだろうか? きっと無理であろうなと思う自分と必ず辞めてやると覚悟を持った自分がいた。 10 俺の夢は小説家になることであった。たくさん本を読みまたたくさん映画を見てインプットの情報量を増やし小説を書くという行為に望む。 働くのが嫌で嫌で仕方なかったので俺は生活保護を受給する道を選んだ。  小説を書く時間が取れることは何よりも重要である。それに映画も見ることができるし本を読むことができる。生活は苦しくなるが貧乏でもよかった。俺は自分の夢に賭けたのだ。それがどうしたものか今はギャンブル依存症に陥り小説家になる努力を何一つとしてしていなかった。解体屋の仕事が入った時、かったるいなと思いはしたもののラッキーと思う自分がいた。なんとか今月は生活できる。  三日間の仕事を終え俺が思ったことはやっぱり働くのが嫌で嫌で仕方ないという事であった。  解体屋の仕事と言っても主に空き家の解体がメインで建物をまるごと一棟ぶち壊すものであった。  向き不向きと問われれば俺には不向きなのであろう。  現場の元請けの責任者である福田さんは解体屋の仕事は壊すだけだから簡単なことだろうと言うが、その簡単なことが何一つとして満足にできずまだ29の佐藤君というやはり元請けの社員に唸り飛ばされてばかりいた。自分でもよくわかる。俺がどれだけどんくさいのかが。 11  三日間の仕事を終えた。俺の手持ちは5000円である。だが社長が近日中に給料を届けてくれるであろう。とりあえず5000円あれば一日1000円使うとして五日間はしのぐことができる。でもタバコは辞めなければならない。俺の吸ってるタバコはパーラメント一箱620円もする。果たして何をして過ごそうか? 俺はパソコンと向き合うことに決めた。その前に右ひざがあまりにも痛むので、通っていた整形外科医へ向かうことにした 「水が溜まっていますね」やはりそうか 「今日で三回目ですよ水抜くの」 「半月板が損傷しているかもしれませんね」  そんなやり取りがあり一度MRIで検査してもらいますね。MRIで検査して半月板の損傷が確認できれば手術を受けることになる。  手持ちの金が5000円しかないこともありパチンコ屋に足を向けることはなかった。こんな惨めな生活から抜け出そう。そこにはギャンブル依存症から抜け出したいという明確な決意があった。俺はもう53歳になろうとしている。時間がなかった。小説家になる夢を捨てきれることができなかった。そうだ!自叙伝を書こう昔やんちゃをしていた頃ヤクザの世界に身を置いてた頃の逸話やノンフィクションがいくらでも書けるではないか!  コジコジの配信を題材にしてもいい。でもそれはどうかとは思った。コジコジの配信に遊びに行く時間を読書や映画鑑賞にあてたほうが最も有意義に思えてきた。  俺は決意した。  俺には依存しているものが三つある。ギャンブル依存症。ポコチャ依存症。ニコチン依存症。できることからはじめよう。ギャンブル依存症からは一番に脱却しなければならない。ポコチャからも脱却したい。ただポコチャを題材にした小説を書きたいという願望はあるにはあった。タバコは辞められそうにもなかった。解体屋の仕事はたまには出ることにしよう。社会の中で働くことで得られることも多々あるだろう。  小説家になるという夢を捨てきれずにいる俺。今俺にできることからはじめよう  俺は自叙伝を書くことに決めた。多くの読者に読んでもらうためにポコチャでアピールしてもよい。アピールと言ってもコジコジの配信でコメントを打つかコジコジに紹介してもらうのだ。やはりそんな考えに至るということはポコチャに完全に依存しているという事か?全ての依存から脱却するのは無理だ。とりあえずギャンブルからは足を洗おう。そして数行でいいので毎日小説を書くという動作を続けよう。 12 ポコチャのランクの維持それはメーターの維持であるがそれは課金してアイテムを投げる一語につきる。追いハートやキラコメ、拍手回収、ハート長押しなどいろんな方法があるがランクを維持するにはまたランクを上げるには高いアイテムを投げるの一語につきる。今の俺はギャンブル依存症に陥り高額のアイテムを投げることができなかった。ボックスというプレゼントがポコチャにはあった。ライバーの配信を七分間視聴すると1~10コインがもらえた。一日にもらえるボックスは二箱まででもしそれ以上のボックスを希望するなら他枠に配信に遊びに行ってボックス周りをすればよいそうすれば必然とコインは貯まる。だが一日に20枠他のライバーの配信に遊びにいけば1か2コインしかボックスを開けてもコインはもらえないという。運営側も考えたものである  俺は基本ボックス周りをしなかった。コジコジの配信で得たボックスを還元していただけである。配信に毎日遊びにいけばボックスの還元だけでコアにはなれる。  ボックス周りをするのは基本無課金のリスナーに限る。  ボックス周りは苦痛でしかなかった。コインを得るために14分間つまらない配信に耐えなければならない。携帯電話をほったらかしておけばいい話だと思うかもしれない。だがボックスを開けてコインを得るためには90秒ごとにコメントを打つ必要性がある。コメントが止まるとタイマーが赤くなり停滞する。コインを得るために多少の苦労はあるのだ。  タイマーが停滞したままにしておくとボックスを得ることができない。  時にドラゴンの清水と言われトップリスナーに君臨していたこともある。3333コイン金額にして3300円のアイテムを連投するのだ。  なぜそれほどまでにコジコジに貢献していたのであろうか? 今はリアルな自分の生活と見つめ合う冷静な自分を問い質す。コジコジの笑顔が見たかった。頑張っているコジコジを応援したいという気持ちが強かった。  アイテムを投げるという行為は誰かのためにはなっていた。それは他ならぬコジコジのためでもあった。だが今はどうであろうか? 勝てるはずもないパチスロに身を投じ日々堕落した生活を送っている。たまに勝つときはあるがトータルでは完全な負けである。誰のためにもなっていない。自分の欲望を満たしギャンブル依存に陥っているだけだ。  コジコジにアイテムを投げてた時の俺は働きにも出ていた。職場で苛めにあってもコジコジの配信が俺を救ってくれた。総額にして調べてみると70万円ぐらい投げたであろうか? 我ながら思う。よくそれだけのお金を投げたものだと。 13 コジコジは苦戦していた。貧乏神というバク投げリスナーがいて、一時S2までランクを上げたが貧乏神は気まぐれでいつ現れていつ消えるかわからない。そうこうぞうやポトフというリスナーも高額なアイテムを投げコジコジのメーターを維持することに務めてはいたが、貧乏神が去りコジコジは毎日ランクを落としていった。  俺はなぜアイテムを投げることができなくなってしまったのであろうか? ギャンブル依存に陥ったことも原因の一つではあるが、それだけではないような気がする。リアルな現実と向き合ったからだ。  課金して投げるといった行為が無駄に思えてきたのだ。  ポコチャは無課金でも応援できる。枠周りをしてコインを貯めてそのコインを自分の推してるライバーに投げるのだ。  そんなまどろっこしい真似はできなかった。大体にして俺は枠周りが好きではない。苦痛でしかなかった。時間は有限である。無限ではないのだ。  俺には夢があった。小説家になるという確個たる夢だ。その夢のためにギャンブルから足を洗おうと決意も固まった。後は前進あるのみである。  コジコジに別れを告げよう。ポコチャから卒業するのを言葉にして告げるのだ 14  コジコジと出会った日が思い出される。配信に遊びに行った初日から清水と呼び捨てにされた。そこに怒りはなかった。逆にスッキリした気分だったのが昨日のことのように思い出される。  コジコジはB3からダウンしてB2までランクを落としていた。配信に遊びに行っても今の現状にたいする不満や不安が時に垣間見えた。  今の俺にできることは何一つない。 ――コジコジありがとう ――どういう意味よ コジコジが言葉を返す ――今まで本当にありがとう 俺は再び言葉を繰り返す ――清水はいつからかまちょになったの ――継続は力なり ありきたりの格言を言葉にしてコメントを打つ ――なに言ってんだかさっぱりわからない。  黙って去るべきなのだろうか? それも一理あった。だがどうしても別れの挨拶を告げたかった。コジコジにたくさんのものをもらった。勇気に希望。コア特典もいくつもらったであろうか? コア特典とは30Kやレインボーである40Kになるともらえるコジコジが印刷されたTシャツやトレーナーである。俺の部屋のハンガーには沈黙を守りいくつものそれらが吊るされていた。  別に改めて別れを告げなくてもいいではないか。そんな気がしないでもない。別れを告げると改めて配信に遊びに行くのがつらい。でも俺は小説家になるという決意を固めた。それも自叙伝である。 ――ポコチャは卒業するよ。コジコジも頑張ってな 俺のコメントにコジコジが言葉を返す前に俺はログアウトしてポコチャをアンインストールして画面を閉じた。
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