なる、なる、なる。

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 今、大学に通っているのか、それとも。 「芙美ちゃん、めっちゃ化けたよねー。なんていうか、派手系のお姉さんになったってかんじ?」 「もう、やめてよ。その言い方だとオカマみたいじゃんあたし!」 「ごめんごめん」  酔いが回ってきた隣の男子に声をかけられて、芙美はひらひらと手を振っている。 「今何やってるの、芙美ちゃん。まさか、マジでホステスとか?」  別の女子が声をかける。芙美は両手の指を二本立てて、ダブルピースをしつつ、大正解!と笑った。 「いやあ、あたしも昔はこんな風になるなんて思いもしなかったわ。でも、ホステスって結構スキル必要だし、やりがいのある仕事なのよ?」 「ええ、そうなの?」 「そーよ!コミュ障じゃ絶対できないもん!いかにお客さんに笑顔で帰ってもらうか、高いお酒頼んで貰えるか、それが超大事っていうか?でもって、お客さんの話の内容もちゃんと覚えてないといけないし……来たお客さんの顔を覚えておくってのはまあ常識の範囲だしね。水商売なんて、って馬鹿にするやつもいるけど。この業界ほど、努力次第で稼げる仕事ないとあたし思ってるから。実力を正当に評価してもらえるし、頑張れば頑張っただけ稼げるってのはすごくいいなと思ってるわけ。まあ、色仕掛けを学ばないといけないのはアレだけどお?」 「あはははは、芙美ちゃんほど美人なら問題ないでしょそこはー!おっぱい揉ませてくれるのー?」 「やーん田中くん、セクハラ!潰すよ?」 「潰すって、こっわ!」  本気なのか冗談なのかわからない会話を繰り返す芙美と友人たち。芙美は左手に持った箸をかちかちと行儀悪く鳴らしながら、からからと笑い声を上げている。 「しかしねえ。昔は学校の先生になりたいとか言ってたのに、あたしもねえ。ちゃんと頑張れば稼げる他の仕事知っちゃったらもう、そういう堅実な職業は選べないっていうか?」 ――え?学校の先生?弁護士になりたいんじゃなかったっけ?  私は自分の手元のビールを飲みながら、首を傾げた。幼い頃の夢だから、忘れているのだろうか。もちろん、その可能性も十分にある。でも、小学校の頃の彼女はあれだけ熱心に、どんな自己紹介にも“将来の夢は弁護士”と書いていたし、東大に入って困っている人をたくさん助ける人になるんだと息巻いていたというのに。  捨ててしまった夢ならば、そんなに簡単になかったことにしてしまえるのだろうか。いやしかし、学校の先生になりたいなんて彼女が言っていたことは一度もないような気がするのだが。  それに。 ――左手……。  彼女は左手で箸を持っている。おかしい。芙美は、元は右利きであったはずだ。同じ班になって一緒に給食を食べたこともあるからよく覚えている。というか、四年生のクラスは左利きが極端に少なくて、男子が二人だけだったのではなかっただろうか。
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