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人里離れた山奥。
風景に紛れるようにひっそりと存在する山小屋。朽ちた戸が鈍い音を立てて開き、フードを被った人物が現れた。
「失礼ですが、冴梨曖裏さんで?」
突然の訪問者に、フードの人物は足を止め固まった。
「捜しましたよ。まさかこんな辺鄙なところに住んでらっしゃるなんて」
「……人違いじゃないですか?」
チラリと目線を上げ視認したその顔に、フードの人物は大きな黒目に光を宿らせた。
「お、温田、せん、せい……?」
駆け寄った反動でフードが脱げ、顔が露になった曖裏は、かつての恩師の名を呼んだ。
「嘘……。本当に、温田先生? そんなはず……。まさか、先生も“スイッチ”を押して超人に? そうなんですか?」
動揺する曖裏に、温田は至って冷静に述べた。
「確かに僕は温田ですが、あなたの知る温田ではありません。僕はあなたの担任だった温田の孫です」
「孫……」
衝撃の事実に、曖裏は崩れ落ちるようにその場に座り込んだ。
「あまりにそっくりだから驚いたわ。そう、孫……。それだけ時が流れたのね。長い間世俗から離れてて気づかなかったわ」
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