2人が本棚に入れています
本棚に追加
「とりま先生来る前に早く自分のクラス戻った方がいいよ」
「温田センセはマジメだから冗談通じないもんね」
やがて予鈴のチャイムが鳴り、生徒達はそれぞれの席に着いていく。
「おーし席つけー」
温田が教室に現れ、いつもの調子で出席を取り始める。
「冴梨」
「はい」
聞き慣れない声に思わず出席簿から顔を上げた。
「ん? キミはうちのクラスの生徒じゃないな。そこは今風邪で休んでる生徒の席なんだ」
「風邪なら完治しました」
「いやキミじゃなくて。とにかく自分のクラスに帰ってくれないか?」
教室内がざわつき始める中、曖裏は静かに起立した。
「確かに二年前先生のおっしゃった通りでした。成長しない人間などいない、って」
「え……」
「ですがどうやら自分のペースでゆっくりと成長するのは無理でした。私はこれから、蝶になります」
その言葉にハッとする温田。
「……冴梨? 本当に、冴梨なのか?」
うっすらと浮かべた笑みに、温田は眼鏡をかけた曖裏の面影を見た。
「今の私なら、なんでもやれる気がするんです」
最初のコメントを投稿しよう!