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「とりま先生来る前に早く自分のクラス戻った方がいいよ」 「温田センセはマジメだから冗談通じないもんね」  やがて予鈴のチャイムが鳴り、生徒達はそれぞれの席に着いていく。 「おーし席つけー」  温田が教室に現れ、いつもの調子で出席を取り始める。 「冴梨」 「はい」  聞き慣れない声に思わず出席簿から顔を上げた。 「ん? キミはうちのクラスの生徒じゃないな。そこは今風邪で休んでる生徒の席なんだ」 「風邪なら完治しました」 「いやキミじゃなくて。とにかく自分のクラスに帰ってくれないか?」  教室内がざわつき始める中、曖裏は静かに起立した。 「確かに二年前先生のおっしゃった通りでした。成長しない人間などいない、って」 「え……」 「ですがどうやら自分のペースでゆっくりと成長するのは無理でした。私はこれから、蝶になります」  その言葉にハッとする温田。 「……冴梨? 本当に、冴梨なのか?」  うっすらと浮かべた笑みに、温田は眼鏡をかけた曖裏の面影を見た。 「今の私なら、なんでもやれる気がするんです」
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