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「今宵は綺麗な月だな」
先程から優之進の背後にいた者が、近づいてきて声をかけてきた。
優之進が、今まで感じたことの無い大きな力が迫ってきているのは分かったが、剣術から発せられ気ではなかったので、そのまま月を眺めていた。
大きく白い輝く満月だ。
「左様でございますね」
優之進は、誰であるかうすうす分かっていたので、言葉使いに気をつけ、その者の方を見ないようにした。
「隣りに座ってもよいか?」
と聞かれたので、
「どうぞ」
と優之進が言うと、その者は隣りに座り、
「部屋に月の明かりが入ってきていたから、外に出るととても綺麗であった」
と言いながら、尻の位置を安定させ、
「もっと綺麗に見える所はないかと歩いていたらここに辿り着いた」
と言ったので、
「ここは特等席でございます」
と優之進が言うと、
「そなたは何を職にしておるのだ?」
と聞かれ、
「絵を描いております。
それと道場にて剣術を教えております」
と優之進が答えると、
「絵であるか」
とその者は言い、
「それでは今宵の月を描いてもらえるか?」
と聞かれたので、
「一刻ほどいただければ描けます」
と優之進が答えると、
「一つお願いできるか?」
と聞かれ、
「家はすぐ近くですのでお待ちいただけますか?」
と優之進は答えてから、
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