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バンテッド公爵家が長男【ウィリアム・V・バンテッド】は、不運な子供である。
国で二番目に偉い公爵家の生まれであり、
王位継承権も持っていて、
長男だったにも関わらず、
「おまえ、公爵家なのにスライムテイマーなのかよぉ!」
「ザーコ、ザーコ、ザーコっ!」
「おい。泣いてないで、スライム呼び出せよ! 一気に蹴散らしてやるからさぁ」
「…………」
【テイマー】とは
――魔力でお互いの存在を結び付けて、対象を操る【操者】の意。
その中でも【スライムテイマー】とは
――この世界における、底辺テイマーの代名詞。
世界を救った勇者一行の一人、ドラゴンテイマー【リーテ】の直系であるバンテッド家の長男が、まさかの【スライムテイマー】である。
弟であり、次男のチャールズが【ドラゴンテイマー】の素養があると知るや、公爵家は早々にウィリアムを見限り、チャールズを次期当主にするよう注心することになった。
弟が生まれた齢三歳にて、ウィリアムは大人たちに勝手に見放されて、六歳になって学校に入学するころには、【底辺】【最弱】【落ちこぼれ】のレッテルにガチガチに固められてしまった。
「……うっうううっ」
まだ10歳にも満たないガキどもに囲まれて、ウィリアムは泣かされていた。
国家権力が理解できない子供特有の残酷さでもって、ウィリアムを存分に見下し、配慮も遠慮もなく、放課後の校舎裏で小突きまわさる日々、それがある日を境に一変した。
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