7人が本棚に入れています
本棚に追加
「楽しそうだなぁ、おい」
現れたのは夕焼けを背にカラスの群れを従えて、プラチナブロンドの髪をマントのように翻している、自分たちと同年代の女の子。
ピンクの瞳を持つ愛らしい容貌は、侮蔑の感情で冷え切って、学生服に身を包んだ小さな体からは、周囲を威圧するほどの怒気があふれている。
「あ、お前は、伯爵家の」
「うるさい。だまって、突かれろ!」
ギャアアアアアッ!!!
カラスと子供たちの悲鳴が夕日の中で混じり合う。
あまりにも突然すぎる展開に、ウィリアムは呆然とした。
そして。
「お前、私の婚約者になれ」
「え?」
「聞こえなかったか? 恩人に対する、態度じゃないぞ」
「え、あ、はい。ごめんなさい」
「私はシャーロット・カートレット。伯爵家の長女で、一応君と同じクラスメイトだ」
「ぼ、ぼくは、ウィリアム・V・バンテッド……です。あの、助けてくれてありがとうございます。お礼を」
「うん。そのお礼が、カートレット家への婿入りだよ。私は君を歓迎する」
――優しいシャリー。
初めは同情だったのかもしれないけど、僕はとても救われたんだよ。
最初のコメントを投稿しよう!