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鬼十郎は姿勢を正し、鬼斗に視線を戻す。
「鬼斗様。宴会を抜け出すのも大概にしてくださいませ。前回も前々回もそうでしたが……。探す私の身にもなっていただけますか?」
「……申し訳ない」
「ちなみに、宴会から逃げ出した鬼斗様に代わり、今捕まっていらっしゃるのは鬼華様でございます」
「すぐ帰ろう」
「……妹君のこととなるとご決断がお早いですね」
「……兄心だ」
鬼斗はシスコン。
鼓美は2人のやり取りに思わず笑ってしまった。
「シスコンなんだ」
「どうした鼓美。突然笑ったりなど」
「い、いえ、なんでもありません」
鬼斗はシスコンの意味が分からなかったようで、怪訝そうに鼓美を見ていた。
「鼓美様。家はどちらですか? 夜中ですから、家までお送りいたします」
「あ、いえ、あの、すぐそこなので大丈夫です。あ、でも、屋根からは下ろしてほしいです……」
鼓美が恐々と下を見ながら言うと、鬼斗が上ってきたときと同様に姫抱きで鼓美を地上に下ろした。
鼓美は地面に足を付けると、ずっと掴んだままだった鬼斗の着物の袖を離した。
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