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その日の夜は、やけに喉が渇いた。
鼓美は祖父母にくれぐれも家から出るなと言われていたにもかかわらず、近くのコンビニに行くくらいなら平気だろうと、こっそり家を出た。
家にあるお茶よりも、ジュースが飲みたかったから。ついでにお菓子も買ってこようと考えていた。
家を出た瞬間、輝かしいほどの月明りが辺りを照らしているのが見えた。街が淡く蒼色に染まっている。
蒼く輝く月は幻想的だった。まるで夜空を反射させて輝いているかのようだ。
鼓美は妖しく浮かぶ月を見上げながら、踏切向こうのコンビニを目指した。
風の音さえ聞こえない夜だった。
まさか皆、百鬼夜行の話を本気にしているのだろうか。
「こんなきれいな月なのに、外に出ちゃダメだなんてもったいない」
鼓美はスウェットのポケットからスマホを出し、カメラアプリを起動して空に翳した。
月を撮ってみるが、どうも上手く撮れない。
鼓美はもう一度シャッターボタンを押した。
「んー……」
もう数枚撮ってみたが、やはりきれいに映ってくれない。スマホの画質が良くないせいかもしれない。
諦めようかとスマホを下ろした時、視界の端に何かが見えた。
はためく布のようだった。洗濯物かもしれない。
そう思って顔を上げた鼓美は、息を飲んで足を止めた。
屋根の上に何かがいた。
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