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「それはそうと鼓美、いつまでそこに座っているつもりだ? 衣が汚れてしまうぞ」
鬼斗に言われ、鼓美は自分が尻もちをついたままだったことを思い出した。
慌てて立ち上がり、服に着いた汚れを払う。
「あ、あの……。あなたは、その、妖怪、なんですよね」
「あぁ」
「えっと……。あなただけ、ですか?」
「鬼斗だ。そう呼べ。ここには俺しかいないが……何か不満か?」
鬼斗は不思議そうに首を傾げた。
鼓美は失礼なことを訊いたかもしれないと後悔したが、今のところ鬼斗が怒っている雰囲気は感じ取れなかった。
背中に冷たい汗が流れたが、気付かないふりをする。
「不満とかではなくて……。その、蒼い月が出る日は、百鬼夜行が行われるって言い伝えがあって……」
「ほう。まだ言い伝えられているのか。鼓美が外を出歩いているから、てっきり廃れたものと思っていたが」
「それは……」
「ははは。分かっている」
返す言葉もなく、鼓美は地面に視線を落とした。
けれどすぐに「知りたいか?」という言葉に、顔を上げた。
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