蒼い月

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蒼い月

『月が蒼く輝く日は、百鬼夜行が行われる』 それは鼓美(つづみ)の住む地域にある言い伝え。 ここが小さな村だった頃から伝えられていたものだ。今では近くにあった3つの村と統合され、町になってしまったが。 月が蒼く染まるのは、きっちり100年に一度。 過去に百鬼夜行を見た人たちは、誰も生きていない。故に若い人たちの中には、百鬼夜行の話を信じる人は少なかった。 鼓美もその信じない1人だった。 百鬼夜行だなんてバカバカしい。そんなものがあるわけがない。 そもそも妖怪なんているわけがないのだから。 それでも蒼い月の話は、祖父母や両親から代々語り継がれる。 怖い妖怪たちが悪戯しに来るぞと脅かされ、家から出ないように言いつけられるのだ。 小さな子どもなら素直に信じるかもしれないが、高校生にもなった鼓美には、ただの子ども騙しにしか聞こえなかった。夜中に口笛を吹くと蛇が来るぞとか、そんな昔の人の知恵。 だとしたらどうして蒼い月の日だけなのかという疑問は残るが、鼓美にとっては些細な疑問でしかなかった。 古い書物によると、前回の蒼い月の日から100年後というのが今日、10月1日だった。 町中の年寄りたちが、夜に出歩くなと言って回っていた。 祖父母や両親に、さっさと寝るようにきつく言いつけられた。 鼓美はバカバカしいと思いながら、周りの人たちからの忠告を聞き流した。
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