追憶

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「えーっ、では、坂崎(さかざき)部長、どうも長い間お疲れ様でしたー！」

パチパチパチパチパチパチ............（拍手）

「こんなに素敵な花束をありがとう！　みんな、今まで私が無理を言っても、いつも一生懸命について来てくれてありがとう。信頼できる部下がいたからこそ、今日まで勤め続ける事ができました。みんなには心から感謝しています。本当にありがとうございました！」

パチパチパチパチパチパチ............（拍手）

「先輩、部長は今日帰ったら、ドラマみたいにあの花束を奥様へ渡すんですかねぇ」

今年入社した女性社員が言った。

「ううん、坂崎部長の奥様はね、3年前に亡くなられたのよ」

「えっ？　そうなんですか？　じゃあ、今日は帰っても1人.......？」

「たしか近くに娘さん一家が住んでいたと思うけれど、どうかしらね？」

「そうなんですね.......坂崎部長、いつも凄く優しかったから.......なんか切ないです.......」

女性社員はそう言うと、潤んだ瞳で坂崎の後ろ姿を見送った。