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マンションにつき、蒼司は速足で部屋まで向かった。
「菜那さん、ただいま」
「蒼司さんっ、お帰りなさい」
菜那は大きなお腹を抱えて玄関まで迎えに来てくれた。菜那と一緒にふわふわとシチューのいい匂いが漂ってくる。
「お疲れ様です。寒かったですよね、ちょうどシチューが出来上がったところです。食べましょう!」
リビングに入り、菜那のよそったシチューをダイニングに並べた。一緒に向かい合って食べる料理は最高に美味しい。
「菜那さんの作る料理は全部俺好みの味なんですよねぇ」
スプーンを持った蒼司はしみじみと呟いた。
「ふふっ、それ、出会った頃も言ってましたね」
「あの時は仕事だったからこうして向き合って食べれなかったけどね」
「そうでした。一緒に食べれるって幸せですね」
一言、一言が素直で可愛い。出会った時からずっと変わらない、菜那の素直なところが蒼司の心を癒してくれる。
「俺が洗うから、菜那さんは座ってて」
ワイシャツを捲り、蒼司はスポンジを握った。
「いつもありがとうございます」
ソファーに座った菜那をキッチン越しに見る。
菜那は小柄だからか外に出ると出先の先々で「双子ですか?」と言われるくらいお腹が大きい。食器を洗うにも、風呂を洗うにもとにかく大変なのは父親学級に参加した時、擬似妊婦体験をしたので実感済みだ。家事が苦手な蒼司も菜那のため、子供のためと思えば率先して家事をしたくなる。
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