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「っ!? 菜那!? なんでっ……」
立ち尽くす菜那を見た樹生が慌てて動きを止め、布団で女を隠した。
隠しても無駄なのに……。
はっきりとこの目で樹生に抱かれている女の姿を見てしまった。本来ならばあそこにいるのは自分のはずなのに、なんで自分はここに一人で立っているのだろう?
「風邪、引いたっていってたから……」
エコバッグを握っていた右手に必要以上の力が入る。
「なのに、どういうこと……?」
震えそうになる唇を噛みしめながら樹生を見た。とてもじゃないけれど、布団の中に隠れている女の方を見る気にもなれない。樹生は悪びれる様子もなくベッドから降り、ボクサーパンツを履いた。
「見てのまんまだよ。浮気した。だから別れてくんね?」
……え?
自分に言われたであろう言葉が信じられなくて、信じたくなくて、言葉が出てこない。喉のすぐそこまで「嘘でしょう?」と出てきているのに声に出すことが出来ずに、唇が震えだす。
樹生は髪をガシガシと掻きながらボスンッとベッドに腰かけた。
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