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「近藤様、大体のゴミは処分が終わりましたので、ここからはご一緒に捨てるか捨てないかの判断をお願いしたいのですがよろしいでしょうか?」
「あぁ」
菜那が近藤に話しかけると、面倒くさそうに腹をガシガシとかじりながら近寄ってくる。ゴミが無くなり綺麗になったばかりのダイニングテーブルの椅子に近藤はドカンッと座った。
「では、まずこちらのテーブルの上のものから確認をお願い致します」
菜那は一つずつ近藤に確認を取りながらいるものといらないものを分けていった。明らかにゴミというもの以外はきちんと依頼主の確認を取ってから処分するようにしている。破れている雑誌の一冊でさえ菜那はしっかりと確認していた。その人にとっては破れていても、もしかしたら思い出の詰まっている大切な宝物かもしれないから。
「近藤様、新聞紙の方もまとめて捨てさせていただきますね」
「あぁ」
どうでもいいとでも聞こえるような小さな声。それでも視線は痛いくらいに菜那に向いていて、全身を値踏みされているかのようにジロジロと見られている気がする。
なんかちょっと、やりづらいな……。
近藤の視線に違和感を覚えながらも三時間という時間はあっという間に過ぎてしまい、ゴミの処分は済んだものの掃除まで至ることができずに残りはまた次回という話になった。
近藤の家を出て、沙幸と二人で事務所に戻るため車に乗った。カジハンドの事務所は都内にあるが小さな店舗だ。
社長の鷹田尚美(たかだなおみ)率いるカジハンドの従業員は全六名。菜那も高校を卒業とともにカジハンドに就職してもう八年になる。
「にしてもさ~、今回のお客様はかなり手ごわそうじゃない? 家事代行というよりも掃除業者を呼ぶレベルだったと思うんだけど」
運転しながら沙幸はため息をついた。それにつられて菜那の口からもため息が漏れる。
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