一章、理不尽な仕打ちと運命の再会

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「では社長、お先に失礼します」 「お疲れ様でした。明日もよろしくね」  ぺこりと頭を下げた菜那を見て社長は優しく微笑んだ。菜那も笑い返して事務所を出る。 「わっ……」  事務所を出るとぱらぱらと雪が降っていた。手のひらにのせるとじゅわっとすぐに消えてしまう小さな雪粒。 「本当に降ったんだ」  季節は二月だが菜那の住んでいる東京都で雪が降るのは珍しい。アスファルトに落ちていく粉雪は瞬く間に水へとかわっていく。朝の天気予報で雪が降るかもしれないと言っていたので鞄の中に折りたたみ傘を入れていたのは正解だった。 「う~、寒いっ」  早く家に帰ろう。  菜那は傘を広げて歩き出す。ふわふわと軽い雪は菜那のピンク色の傘に白い模様を施していった。
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