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「なんだか雨が降りそうですね」
「けっこう寒いし、雪になりますかね?」
「菜那さん、大丈夫ですよ」
車に乗っている間も蒼司は菜那を励まし、気を逸らしてくれるような会話をしてくれた。そのおかげか、一人でいる時よりも遥かに気が軽く、病院に着いた頃には気丈に振舞えていたと思う。
「お母さんっ」
急ぎ足で廊下を進み、勢いよく病室の扉を開けた。
「あら、菜那。どうしたの?」
「へ……?」
母親はベッドの上で起き上がり、雑誌を開いていた。鼻に管が通り、酸素を入れられているとしてもなんだか元気そうに見える。顔色だってこの前来た時より全然いい。
「え……呼吸が浅くなってるって……大丈夫、なの?」
「全然大丈夫よ。やだ、看護師さん菜那に電話しちゃったの? 心配かけてごめんね」
「そう、なんだ……」
その言葉にガクンと身体の力が抜けた。
「っと、危ない」
足の力が抜けた菜那を蒼司がタイミングよく抱き支える。
「あ、すいません……なんか気が抜けてしまって……」
「大丈夫ですよ」
蒼司を支えに菜那は立ち上がり、母のベッド横に立った。
「お母さん、本当に大丈夫なの?」
「本当に大丈夫よ。ほら、現に今だって暇で雑誌読んじゃってるくらいよ?」
ニッコリと笑って見せてきた雑誌は有名な分厚い結婚雑誌だった。
「ところで、そちらの方は?」
「あ、えっと」
「もしかして……」
ジロジロと母親は蒼司を見ている。
な、なんて説明しよう。仕事先のお客様でいいよね? 現にそうだし……。
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