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――蒼司side
コートを羽織り、蒼司はマフラーを首に巻いた。マンションの外に出るとひんやりと冷たい風が蒼司の頬を通り抜けていく。
……菜那さんはお別れ会を楽しんだだろうか。
菜那の事を思いながら夜空を見上げ、歩き始めた。
お店の照明に照らされながら歩き進めると菜那がお店の前で立ち、夜空を見上げていた。今日は晴れていて星が綺麗にみえるもんなぁと思いながら近づくが蒼司には夜空に浮かぶどの星よりも輝いているように菜那が見える。
「綺麗な星だなぁ」
ぼそりと菜那が呟いた。
「ですね。でも、こんな綺麗な星空だとしても夜道に女性一人は危険ですよ」
「っ……蒼司さん? どうしてここに?」
菜那が驚いて蒼司を見上げた。
「妻が夜遅くに一人で出歩くなんて心配で迎えに来てしまいました」
「そんな、大丈夫だって言ったのに。お店だってマンションから近いんですから」
「いいんです。俺が菜那さんと少し夜道の散歩をしたいなって思ったから。ね?」
蒼司は菜那の手をそっと握った。お酒を飲んだからか菜那の体温が少し高く感じる。
「手を繋いで帰れば寒くないですよ」
「ふふっ、本当ですね。あったかいです。あったかいなぁ」
真っ白な頬を紅色に染めている菜那はふにゃっとした笑顔を見せた。その笑顔が心臓を突き破ったのは言うまでもない。
「菜那さん、少し酔ってるでしょう?」
「ん? 酔ってなんかないですよ~。でも、本当にあったかいです。こうやって手を繋いで歩くのっていいですね」
歩きながら菜那は繋いでいる手を持ち上げてふふふ、と小さく笑った。
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