4676人が本棚に入れています
本棚に追加
「蒼司さん、かっこよくて、頭もよくて、すっごく優しくて、お仕事も建築士で素敵なホテルを建設しちゃって本当は私なんか遠い人間だなって思ったんですよね~」
「そう思ってくれていたんですね。でも今は遠くないでしょう?」
「ふふ、そうですね。出会った時から蒼司さんは私のヒーローでした」
「ヒーローって。菜那さん、俺は優しいだけじゃないんですよ?」
蒼司は菜那の手を少し強く握り、自分の元へ引き寄せた。そして耳元で囁く。
「今すぐに貴女を抱きたいってエロいことも考えているんですから」
「やっ……」
耳まで真っ赤にして菜那は困った顔をした。その顔が男を誘ってしまうのも無自覚なのが恐ろしい。
「エロい男は嫌ですか?」
蒼司は畳みかけるように菜那に囁く。
「それはっ……」
「それは?」
「き、嫌いじゃないです。でも……それは蒼司さんだからであって、蒼司さんじゃなきゃ嫌」
「貴女って人は本当に……」
蒼司も困ったように笑い髪を掻き上げた。
「蒼司さん、マンションに着きましたよ。あの……本当に今日から一緒に住んでもいいんですか?」
ピタッと立ち止まって菜那は不安げに蒼司を見つめた。大きな瞳からは少し不安を感じとれる。そう思うのも仕方ない。ここまで来るのにゆっくりでいいと言っておきながら急がしてしまったのは自分なのだから。
「もちろんですよ。菜那さんは私の妻なんですからね。それにもう荷物だって運んであるでしょう?」
「そ、そうでした」
菜那は視線をアスファルトにうつした。どうしたんだろうと腰を曲げて菜那の顔の近くに寄ると耳を真っ赤に染めている。
本当に感情に素直な人で、愛おしい。
「さぁ、入りましょう」
「はいっ」
繋いだ手を離さずにマンションの中に入る。さっき言ったことは覚えているだろうか。今すぐ抱きたいって言ったことを。
最初のコメントを投稿しよう!