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召喚の条件
「って、お前か……」
知己は呼び出した相手を指さして、あからさまに落ち込んだ。「I came from CANADA.」
「え? カナダ?! 地獄じゃないのか?!」
知己でも分かる中学生英語で語り掛けたかと思ったら、
「NO.NO. 呼び出しておいて、何なんです? その態度は。日本は礼に始まって、礼に終わる、礼の国でしょ? 懺悔なさい」
と、いきなり叱られた。
だが、言われたことはもっともだ。
「すまない。呼び出したい相手と違ったもので、つい……」
知己は素直に謝ると、神父の服装なのになぜか頭には角、背中には悪魔の羽が付いたクロードが
「おお、素直な子は大好きですよ。許します」
と、あっさり許した。
なぜか知己の両手を己の両手で包み込み、青く澄んだ瞳で見つめる。
「私は悪魔神父のクロード。呼び出されついでです。あなたの召喚魔法のお手伝いをしましょう」
「手伝い? そんなこと言って、後で何か請求するのでは?」
巧い話に乗ってはいけない。
子供の頃から、親に教えられたことの一つである。
「いいえ。報酬は一切いただきません。知己が私との夜に満足したら、それが何よりの報酬です」
クロードは大人の意味で言ったが、知己は分かっていなかった。
「じゃ、本当に手伝ってもらってもいいのか?」
正直、師匠からぽーんと放り出されたようなもの。心細かった知己は、クロードの甘言にまんまと飛びついた。
「悪魔って名前がついているくらいですから、あなたより多少は魔法の知識があるかと思います」
「なるほど」
知己はチョロかった。
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