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そんな人間が、一体どうやって「生きていく」のか。
どうやって「食べていく」のか。
オメガ男性の僕の母は、割と早くに亡くなっていて、ベータの父親とは疎遠にしている。
オメガ男性は基本的に、まずはアルファと婚姻関係を結ぶけれど、まあ、それは強制ではない。
表向きは、一応オメガにも「婚姻の自由」が保障されている。
でもまあ「表向き」だ。
法律や憲法で権利が「保障されている」からといって、必ずしも、それが実体を反映するか? といえば……それは「お察し」ってところだろう。
でも、オメガとベータの組み合わせも、実は意外になくはない。
アルファとオメガの組み合わせでは、アルファの出現率は高くても、オメガが比較的生まれにくいようで。
一方、ベータとオメガの生殖行為では、アルファよりもオメガが、「どちらかというと」生まれやすいとされていた。
科学的に証明されるのかどうかとか、統計的に有意と言い切れるのどうかとか。
そういうのは、色々と難しいらしいけど。
実は昔から、オメガが割と、「ベータ同士の関係」から出現していたこともあり、その傾向は「おおよそ確かだろう」と思われているのだ。
ベータとオメガの「番い」の場合、オメガはアルファからの「おさがり」が与えられることがほとんど。
うちの親も、そういう関係だったんだろう。
ハッキリは聞いてないけど、たぶん。
要するに、僕は実家をまったく「頼れない」ってコトだ。
で、僕はどうやって生活費を稼いでいるのか。
売ってるんだ。
「精液」を。
僕の「精子」は、なぜか必ず母胎を孕ませる。
そして、順調に出産まで到達すれば、必ずアルファかオメガのどちらかが生まれた。
どうしてだかは知らない。
でも、絶対にそうなった。
これは「秘密」だ。
僕の「プライバシー」。
そして、僕の精子が欲しい人間は、絶対にそれを国にバラしたりはしない。
そんなことをしたら、手に入らなくなるから。
僕のザーメンが。
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