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数日のあいだ。
僕の発情臭にあてられたショーマが好き放題、僕を犯して。
でもベータの性欲では限界があるから、僕はとまらない疼きに、ひとりさいなまれ続けて。
そんな、地獄みたいな発情期がやっと終わった。
「今回も、あんま出なかったな」
ショーマがウンザリした口調で吐き捨てる。
「こっちはさんざん、オマエのケツマンコに搾り取られたってのによ」
たしかに、僕の精液の量は、最近少しずつ減っていた。
老化?
いいや、たぶん「欲求不満」だ。
性欲が、完全には満たされないから、だから。
ショーマに飼われるようになって、僕は一度もアルファに抱かれていなかった。
一滴の精液も無駄にせず商品にしたいっていう、ショーマの「さもしい」商売根性のせいだ。
それに、万一、行為中にうなじを噛まれ、誰かの「番い」にされたりしたらコトだし。
だって発情期が来なくなってしまう。
ショーマは精液を手に入れられなくなる。そういう理屈だ。
でも、「精液が減った理由」など、僕と同じに、ショーマもおそらく、すでに解っている。
解っているはずだった。
*
次の発情期を目前にしたある日。
ショーマが部屋に、誰かを連れてきた。
四十がらみ? スゴク品のいい紳士って感じの。
スーツの男。
誰がどう見たって「アルファ」だと分かる、そんな男を。
「発情、してないのか?」
僕を一目見るなり、そのアルファは、ショーマを振り返って言った。
「そろそろですよ」と、ショーマが応じる。
「すでにちょっと、甘い匂いがしてるでしょう?」
「ああ、『ほんの少し』だがな」と、アルファが鼻を鳴らす。
「場所は、ここで?」
アルファの紳士が、防水シートを仕込んだシーツを引いた、安いベッドを眺めやった。
不服の感情を隠そうともしない顔で。
「スイマセンね、セキュリティ上の観点から、ここでお願いしますよ」
ショーマが、メチャクチャ適当なコトを言った。
アルファが、僕の顎を掴んで引き寄せる。
首筋の匂いを丹念に嗅がれた。
「うん、匂いは悪くない。好みだ」
そう言って、ごく一瞬だけ、僕の目を見る。
グワリと、アルファの体臭が押し寄せてきた。反射的に、チンコが張って後孔がジワリと熱くなる。
「ああ、強くなってきたな、フェロモンが」
アルファが呟く。
そして、ショーマを振り返ると、「そこで見ているつもりか?」と尋ねた。
「セキュリティ上、そうしますよ」とショーマ。
「そういうが、よもや『行為』の盗撮などは……」
「ありませんって、カメラなんか、どこにも」
ショーマがヘラリと笑った。
軽薄な、チンピラの笑み。
「さあ、始めたらいかがです。もう相当『キテる』んでしょ」
下品な口調で、ショーマが言った。
思わず向けた視線の先、アルファのペニスは、もうバキバキに勃起していた。
すぐさま、ジーンズと下着がひん剥かれる。
ズクリとアルファのペニスが沈められた。
スゴイ質量。
猛烈な熱塊。しょっぱなから、奥の奥が抉りあげられた。
その後は、もう何もかもが分からなくなる快楽。
脳みそが溶けて、耳から流れ出てる。
胎内に大量にぶちまけられるアルファの精液。
吐きそうなほどの快感。
声がかれるほど、喘いで喘いで――
夢なら覚めないでと、縋るように願う僕に、それでもやがて、終わりが訪れた。
僕の中から抜き取られていく、アルファのペニス。
「いや……っ、ちんぽ、もどして、ちんぽぉ……っ」
あさましくねだる声もむなしく、アルファがさっさとベッドを離れていく。
「風呂、使いますかい」
すこしくたびれた声で、ショーマが訊ねる。
アルファのセックスは長い。
眺めているだけでも疲れてしまうほどの時間が経っていたのだろう。
「いや、そのまま車で帰る」
アルファが即答した。そして、
「これを……この男に飲ませろ」と、ショーマに薬のシートを差し出した。
事後避妊薬だ。それもかなり強いヤツ。
そもそも、抑制剤すら上手く身体に合わない僕だ。
正直、そんな薬は飲みたくない。
「だい、じょぶ……ぼく、にんしん、しないから……」
かろうじて、それだけを声にする。
「本当か?」とでもいう風に、アルファがショーマの顔を見やった。
「ええ、ご心配なく。『うまずめ』のオメガですよ」と、ショーマが肩をすくめる。
それでも「信用できない」とばかりに、アルファは僕を振り返り、口をこじ開けて薬をねじ込んできた。
指を喉奥にまで突っ込まれ、仕方なく、僕はそれを飲み下す。
そして分厚い封筒をテーブルに置くと、アルファは出ていった。
「……あり、がと…ショーマ」
僕は礼の言葉を絞り出す。
アルファに抱かせてくれて、ありがと――
でも、それを聴くやいなや、ショーマは、カッと目を見開いた。
そこに宿るのは、怒り。
それも、とんでもない怒りの色だった。
次の瞬間、僕は逆手で頬を張られた。
バシンと、物凄い衝撃音は、鋭い痛みの後に耳に届く。
ショーマが、罵詈雑言を口にしている。
何を言ってるか聞き取れないほどの大声、早口――
直後、アルファのザーメンと僕の淫液でドロドロに溶け切った後孔に、ショーマのペニスが突っ込まれた。
アルファとのセックスの後では、ショーマのチンコの存在感は、ほとんど感じられなくて。
肉を叩きつける音だけが、むなしいほどに大きく響いて。
むず痒いほどのもどかしさが募るだけだった。
ショーマの指が、首筋に伸びてくる。
締められる、首。
強い。ショーマ、力が、強すぎる。
息が、できない。
くるし、いき……。
「…しょ、ま……」
ショーマは、僕の首を締め上げながら、腰を打ち付け続けている。
そして、指の力は緩まない。
「こいつ……このやろう、この、くずオメガ……」
ショーマが繰り返す。
僕のチンコが、ビクンと痙攣した。
あ……しゃせい、する…?
まだ発情期じゃ…ないのに?
でる。
ショーマが、何か言っている。
きこえない。息ができない。けど、もう、くるしくはない。
そして、まっくらだ――
びゅくびゅくと、自分のチンコがザーメンを放つ感触すらも遠ざかっていくさなか、僕は。
ショーマが、僕の名前を呼んだコトって、そういえば一度もなかったんだなって。
そんな風に思った。
おわり
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