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自分が「子供が産めない」ってことは、かなり早い段階で分かっていた。
オメガ性が判明すると同時に、半年ごとのヘルスチェックが義務化され、その結果は、保健所に同報される。
この件については、包括健康基本法が制定されるとき、日弁連とか海外の人権団体とかが、ひとしき異論を述べ立てたようだけど。
もちろん、それは形だけに無視されて、法案は閣議決定どおり、瞬速で可決された。
つまりは、オメガにとって、身体の自己決定権、自身の身体情報などとという、究極的なプライバシーは、国に筒抜けになるってコトのようだ。
市澤瑞貴(いちざわ みずき)
生年月日:皇雅四百九十四年十一月十一日 二十二歳
性別:Ω男性。
初兆:十六歳三か月時。
特記事項:生殖機能案件 有
健康基本カードに記された、僕の情報。
そう。僕は子供が産めない。それが「生殖機能案件」。
要は「ゴミ」ってこと。
この特記事項のせいで、オメガが国から与えられるはずの、数少ない補助や補償、特典の類からも除外される羽目になっている。
それ以外は、僕は「何の変哲もない」オメガだ。
ありきたりだけど、幼い頃から虚弱な身体で。
第二次性徴期にも、男性らしい肉体になり切らぬまま、なんならアルファ女性の身体能力にもかなわないくらいだ。
初兆のときから、発情の制御がひどく難しく、保険適用の薬は、どれも身体に合わなくて、学校の授業にも遅れがちになった。
とにかく、僕の体臭は強くてさ。
発情期が近づく頃には、アルファどころかベータにもギラついた視線を浴びせられる始末。
そして、「その事」から想像されるとおりに、僕の「性欲」もひどかった。
発情が来れば、雄を誘う匂いを発しながら、ダラダラと下腹部を濡らして。
後孔にクスコとディルドを挿入したまま、アクメをキメ続ける。
そんなこんなで、学校の成績は最悪。
年の半分は、マトモに通学できやしなかったのだから、仕方がないと言えば仕方がない。
当然、大学進学もままならず、マトモな職歴を重ねることもできず。
まあ、普通の人間としても、相当に「脳無し」の男が出来上がったってワケだ。
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