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哲也とじいちゃん
「ただいまー」
「おかえり」
部屋に戻って、俺はすぐベッドに飛び込んだ。
マンガをめくり、戦いと冒険の世界に集中しようとした時。
カチャリ。
ドアが開く音に視線を向けると、すきまから目が見えた。
「うわぁあ!」
「なにやってんの哲也!」
母さんがドアをバン! と開けて部屋に入り込んできた。
「のぞき魔! プライバシーの侵害だ!」
「生意気な言葉ばっかり覚えて!
ほら宿題持ってきて。台所でやんなさい」
最悪なことに、台所でも説教は続いた。
「マンガ読んじゃだめって言ってるんじゃないのよ、やるべきことを終わらせてから好きなことしなさいって言ってるの」と母さんはねちねち言う。
俺は漢字の書き取りをしながら「へーへー」と答えた。
「颯太君は帰ってきたらすぐ宿題するのにあんたときたら」
「へーへー」
「へーじゃなくて『はい』!」
颯太が真面目だと、こういう時俺が困るんだよなぁ。早くこの地獄の時間が終わらないだろうか。
しばらくすると、晩ごはんのにおいがしてきた。
「そろそろじいちゃん呼んできて」
「へーい」
俺は縁側から庭に降りて、隣の家に向かった。広くて古い家だ。じいちゃんは1人で住んでいる。
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