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練習を重ねて、わかったことがあった。
俺は村の子だから、うまくできる気がしていたけど、見るのとやるのとでは大違いだった。
思い通りに体が動いてくれない。
「哲也、そこ右足からだよ」
今日も大地君から指導を受けている。
「あー、また同じところで! くそっ」
俺はじたんだを踏む。何度やってもひっかかってしまう。左右対称の動きなのに、颯太につられてしまうんだ。
「しょうがないよ、哲也は難しい役なんだから」と大地君は優しくフォローしてくれる。
確かに龍神は難しい。最初は画質の悪い昔のビデオしか参考にできなくて苦労した。
見かねた大地君が龍神の舞をマスターして、動画を母さんのスマホに送ってくれた。それを見て毎日練習しているけど、まだ間違えてしまう。
俺は「右から、右から」と、太ももを軽くたたいた。
体に染み込むように。がんばれ、俺の体。
「颯太君は、動きのキレが良すぎるかな。ゆったり動いた方がいいよ」
「はい」
颯太は素直に返事する。習いたての頃、振付を覚えるのがあんまり早くて、俺はあせった。
聞けば、前住んでいたところでヒップホップダンスを習っていたという。ずるい。「これだから都会の子はいいよな」と思ったけど、じいちゃんの顔がよぎって口には出さなかった。
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