ひそひそ話

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ひそひそ話

「颯太、もう本番もばっちりじゃね?」  そう言うと、颯太はあたりを見回して、大地君が大人たちと話しているのを確認してから、顔を近づけてきた。 「でもさ、本番は村の人がいっぱい来るんだろ?  まだ知らない人ばっかりだから、僕、緊張しちゃうと思う。正直ちょっと怖い」  俺はびっくりした。  そうか、そういう感じ方もあるのか。 「颯太、なんでもできると思ってた」 「なんでもはできないよ。哲也の方が度胸あるじゃん、声もでかいし。  僕、一人だったらできてないと思う。哲也が一緒だから頑張れるんだよ」  しっかり者の颯太が、俺を頼りにしている。  なぜか鼻の奥がツン、とした。 「そうかぁ。じゃあさ、さっきのところでこっそり『右から』って言ってくれない?」 「いいよ」  俺たちは顔を見合わせてニカッと笑った。  うん、2人ならできそうだ。
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