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「松陰先生が亡くなってから、かなりたったな。」
後ろから低い声がした。
「晋作か。真後ろからくるな。」
杉蔵がたしなめる。
「蓮華に斬られても知らんぞ。」
「分かっている。」
真顔でうなずいた。本当にわかっているのだろうか。不安になり杉蔵は晋作を見つめた。
「おはようございます。栄太郎。」
笑って玄瑞が話しかけた男。吉田栄太郎。
「蓮華?お前、まだいたの?」
「悪いか?」
「別に。」
蓮華と栄太郎は仲が悪い。
互いににらみ合っている。基本栄太郎がなんとなく嫌い、だったら私も嫌い。そんな感じだ。
でも、そんな日々が好きだった。
優しい杉蔵。
賢い玄瑞。
魅力的な晋作。
不器用な栄太郎。
みな、ふと空を見た。
朝日が昇っていた。
杉蔵がゆっくり手を伸ばした。つられてみんな手を伸ばした。
こんな日が、続くと思っていた。
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