壱  咲けよ萩

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「松陰先生が亡くなってから、かなりたったな。」 後ろから低い声がした。 「晋作か。真後ろからくるな。」 杉蔵がたしなめる。 「蓮華に斬られても知らんぞ。」 「分かっている。」 真顔でうなずいた。本当にわかっているのだろうか。不安になり杉蔵は晋作を見つめた。 「おはようございます。栄太郎。」 笑って玄瑞が話しかけた男。吉田栄太郎。 「蓮華?お前、まだいたの?」 「悪いか?」 「別に。」 蓮華と栄太郎は仲が悪い。 互いににらみ合っている。基本栄太郎がなんとなく嫌い、だったら私も嫌い。そんな感じだ。 でも、そんな日々が好きだった。 優しい杉蔵。 賢い玄瑞。 魅力的な晋作。 不器用な栄太郎。 みな、ふと空を見た。 朝日が昇っていた。 杉蔵がゆっくり手を伸ばした。つられてみんな手を伸ばした。 こんな日が、続くと思っていた。
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