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肉食が禁じられて久しい世界。
「昔の人は動物を殺した死体のお肉を食べていました」
そう教えられた子供達は、えー、可哀想、気持ち悪い! と声を上げる。
更に、肉食が禁止された時、暴動や戦争まで起きたという話を聞いて、信じられないといった反応をしながらも、子供達の頭に浮かぶのは、「動物の肉って、そんなにまで美味しいものなのだろうか」という好奇心である。
4年2組、佐渡太一のクラスも、休み時間その話で持ちきりだった。
「俺、昔の本で見たことあるぜ。動物の肉食べてるの!」
「俺も! すげー美味そうだった! 食べてみたいよな、動物の肉!」
そう男子が盛り上がれば、女子が抗議の声を上げる。
「やめなよ信じられない! 動物が可哀想だと思わないの? 今の食事だって充分美味しいじゃん」
「そうだよ。牛さんも豚さんも可愛いもん。ワンちゃんと同じだもん。それを殺して食べるなんて、気持ち悪いよ…」
会話を聞きながら太一は、父親の言葉を思い出していた。
『肉食禁止なんてこの世は間違ってるんだ。人間はずっと肉を食べることで文明を発展させて生きてきたんだ。俺の祖父母は畜産農家だった。だから、命をいただくというありがたみを幼い頃から知れたんだ。俺は息子に、肉の味を知らないで育ってほしくない』
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