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革命を起こす、と格好いいことを言っていた大人達は、情けなくも全員逮捕されていった。正も。
「お父さん!」
太一は警察に抗議した。
「こんなの間違ってる! お肉はとってもおいしいんだ! 何が悪いんだ! お巡りさんも食べてみてよ! ほら!」
太一の差し出す肉を、気味が悪いといった目で見つめる警察官は、太一の肩を抱いた。
「どんなにおいしくても、動物を殺して食べちゃダメなんだよ!」
さっきまで太一を可愛がってくれた大人達は、今や太一から目を逸らして俯くだけだ。
太一は保護され、母親がすぐに迎えにきた。
「まさか主人がそんな……確かに、肉食を肯定するようなことを言っていたけど……」
「お母さん、太一君も洗脳されているみたいです。気をつけてあげてください」
両親は離婚した。最後に顔を合わせた父親は、「ごめん、本当にごめんな……」と何度も太一に頭を下げていた。
太一は「被害者」としてカウンセリングを受けた。
「お肉は美味しかった?」と聞かれて「おいしかった」と答えると、「そう」とカウンセラーは微笑んだ。そして、動物の屠殺の古い映像を見せられた。
「動物を殺すのは、こんなに残酷なこと。お肉を食べるというのはこういうことなんだよ」
その他にも、肉食時代の動物がどんなに劣悪な環境にいたかも延々と聞かされた。太一が堪らず床に吐くと、カウンセラーは優しく肩を抱いた。
「大丈夫。太一君は悪くないよ」
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