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何日か休んで登校した太一が、肉食したという噂は学校で広まっていた。
女子達には嫌悪感を持って見られたが、一部の男子には人気者になった。
「なぁ、肉食ったって本当か?」
「うん」
「すっげー! どんな味だった?」
太一が臨場感を持って伝える肉の旨味、秘密の集会、革命のワクワク感は、小学生男子達を惹きつけた。「俺達が代わりに革命を起こすぞ!」と声を張り上げる男子もいた。ずっと「悪いことをしてしまった子供」として見られていた太一は、それに救われた。
事態を深刻に見た教師は、太一に学校を休ませるよう母親に言った。自主退学を進めるようなことも。
母親は泣きながら太一を抱きしめた。ごめんね、ごめんねと謝りながら。
結局太一は転校することになった。別れ際に友達は「いつか革命を起こそうな」と言い、肉食シーンのある古い絵本をくれた。
その友達もいつかは、情けなく連行されていった大人達のようになるのかもしれない。
動物の肉を食べることは、動物にとっては残酷で、グロくて、間違ってるのかもしれない。
だけど。
太一は教科書の間にその絵本を紛れ込ませながら思う。
僕はいつか、仲間を集めて革命を起こすんだ。
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