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五日目、僕の萩原式ツチノコ捕獲トラップを作り、設置準備を行う日となった。
「クソ、クソ、なんであいつばっかり」
小田はまだごちゃごちゃと言いながら罠を張る作業に従事していた。
「おい!小田相変わらずうるせえぞー!黙って出来ねえのか!」
と菊地が叫ぶ。
「ほんとよ。黙って出来ないの?」
と冷静に遠野が毒づく。
「ええい、うるさいっ!」
その2人の声に小田は刺されていた。
「まあまあみんな。小田も頑張ってるんだし。アンタの頑張ってる姿、素敵だと思うけどね」
そう言って山本は小田のことを庇っていた。
「別に。僕はただ指示されたままやってるだけさ。従わないと菊地になんか言われそうだし」
「それでもやってるんだから偉いじゃん」
「なんなんだよ急に、ぼ、僕は二次元にしか興味無いぞ!」
「へぇ、本当に?私は君に興味あるけどなー」
「なんなんだよ。君も喋らず手を動かしたらどうだい」
「はーい。よーし、私も頑張るぞー!」
傍目から見て、この二人、とてもいい雰囲気にしか見えなかった。それを菊地も察したようで、僕に話しかけてきた。
「おい、親友。なんかあいつらいい感じじゃね?」
「うん。特に山本さんがね」
「なんだなんだ、あいつら付き合っちゃうのか!?」
「ちょっと、僕、確かめてくる」
「ああ、おい、親友!」
そう言って僕は、山本に話しかけに行くことにした。僕が他人に話しかけることなど中々ないが、正直とても興味があった。なんであんなクソオタクに惚れているのか、生命科学的興味だ。
「山本さん、小田のどこがいいの?」
「はぁ!?あんた、なによ!!」
「ごめんなさい」
「いや、別に、、いいわよ。ホントの事だし」
怒られたかと思い、即答で謝ったが、どうやら
図星で照れ隠しに、怒った感じの言い草になったようなツンデレ感満載の反応だった。
「で、どこがいいの?」
「私、これまで、何もやるにしてもノリで周りにばっか合わせて、ずっと一歩後ろで眺めて楽しんでた。でも、小田を見て気づかされたの。本当の楽しみは、のめり込んで、熱狂して、最前線で全力を尽くすことだって。そしたらなんかかっこよく見えてきちゃって、それでね」
「ああもうわかったから、それでいい」
「何よ、ここからが本番なのに」
「でも、それってツチノコ探しにも言えることだよ」
「え?」
僕の以外な言葉に、山本は素っ頓狂な反応をした。
「視野を広げるから見つかるんじゃない。逆に視野を狭めて、それに集中するから見えてくるんだってことさ」
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