とある専務の就職アドバイザー

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コンピューターのある部屋に雛形専務は訪れ、そして依頼した。 「わかりました。私共といたしましては、被験者に関するいくつかのデータを元に適切な職業を採択するシステムを開発しています。保志キュウマさんの再就職先の調査ですね。おまかせ下さい」 そう言って、エンジニアは装置を作動し始めた。 「結果が出るまで数時間かかります。それまで別の所へ行かれてはいかがでしょう」 「うん、わかった、そうしよう」 そして、専務は自ら高級車を運転していった。 「キュウマ君。この前君をようやく見つけ出してぼくの屋敷へ連れていったけど、逃げ出してしまった。そればかりか、あろうことか、親友の板東君がキュウマ君のトロールズ復帰を手助けし始めた。ぼくとしては何としてもそれを阻止したい。アメリカから元メジャーリーグのコーチを招待したそうだけど、それは陽神バスターズのコーチに就任させるという裏工作も考えている。もう野球地獄を繰り返させたくない。親父さんや姉であり我が妻のアツコもそう思ってるはずだ。キュウマ君には我が雛形コンツェルン系の会社の中から君にふさわしい職種を世話することにしている。コンピューターを使って君の能力について調査し、そこから君にふさわしい職種を導き出すことにしている」 別の用を済ませたあと、専務は戻ってきた。 「それで結果は?」 「出ています。答えは・・・」 「答えは?」 「『プロ野球選手』と出ました」 「な、何だと?」 「いかがなされました?」 「もう一度やってみてくれないか。データを増やすとかして」 「わかりました。やってみましょう」 そうして、毎日、専務は結果を聞きにやって来た。しかし・・・。 「また同じですね。何度やってもこれ以外の答えは出てきません」 「くそっ、こうなったら、もっとでかいシステムでやってみるべきだ。金はいくらかかっても構わん」 「しかし・・・わかりました。知り合いにもっと詳しい人がいますので、頼んでみましょう」 そして、最新鋭の技術をいくつも盛り込んだ巨大なシステムが設定され、そして計算が行なわれていった。 「以前のよりはるかに優秀なので、1時間もかからずに結論が出てくるでしょう」 そして・・・。 「出ました。『プロ野球選手』」 「何だと。また同じか。別の可能性はないんか」 「残念ですが、コンピューターが導き出した結果です。我々としてはこれ以上どうしようもありません」
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