回転する理不尽な世界

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 迂回に迂回を重ねて、二人はようやく目的地の病院に辿り着く。そこはピカピカに光った大きな病院だった。ターミナルには大量の車が列になって止まっている。 「こんなに大きな病院なのに建物の中はすごく静かなとこなんだ」少女は少年の手を握ったまま、病院のエントランスへと歩いて行く。「よかったら中に遊びにきてよ。わたしの部屋すっごく広いんだよ」    そう言って、少女は優しく少年の手を引く。しかし、少年の足は立ち止まったままでそこから動かなかった。 「どうしたの……?」  少女は少年の顔を心配そうに覗き込む。少年の手は小さく震えていた。 「……逃げなくちゃ」  少年は少女の細い腕を握り返し、走り出そうとする。  甲高いブレーキの音が少年の後ろから聞こえたのはその時だった。  気づいた時には、大きな車がガードレールを突き破り、少年の眼前に迫っている。  少年は走馬灯をみなかった。代わりに少年を捉えたのは、さっき感じた身体が痺れるような既視感だった。
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