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大学4年生の12月だというのに、ミチカは就職活動が終わっていない。
企業に足を運んで説明会や面接を受けても、黒くどんよりした「思い」が社内に漂っていることが多く、その場にいるだけで気分が悪くなってしまう。何も知らない姉からは「選り好みするなんて最低!」と何度も叱られた。
ミチカが唯一安心できる点は、卒業論文がほぼ完成していることだ。姉のように社会科に秀でているわけでないミチカは、日本文学科の近代文学ゼミに所属している。
でもやっぱり就職に日本文学は役立たない。
日に日に迫るクリスマスに街の空気が浮つく中、ミチカはハローワーク通い。
ハローワークの業務時間である19時まで求人票探しに粘り、思うように求人が見つからず、帰路についた。
人の波に揉まれながら駅を目指し、胸にぽっかり空いた心地がした。
大学を卒業したらどうなるのだろう。
仕事は。
今後の人生は。
自分は何がやりたいのか。
考えれば考えるほどお先真っ暗に感じてしまう。
不意に足が止まり、嫌な感じがした。
負のちからが強い「思い」に目をつけられた。
逃げなくては。
逃げなくては。
そう思うのに。
もがくことができず、視界が真っ暗になった。
――ミチカちゃん、酷い!
姉の言葉が頭の中で響く。
姉は大学生の間は叔父夫婦の家にいたが、社会人になるとアパートを借りて引っ越した。中学生だったミチカも、姉に言われるがままに同居することになった。
姉は当時から情緒不安定で、「思い」が黒いもやを発してまとわりついていたが、それとは関係なく自分に自信がなくて塞ぎ込む性格だった。
姉がヒステリックになったのは、大学進学を機に叔父夫婦の家を出た直後だった。
――ミチカちゃん、酷い! 私が仕事で忙しいのがわかるのに、一緒に暮らしてくれないなんて!
――ミチカちゃん、酷い! 私を怒らせないでよ! 怒りたくないのに、怒るようにミチカちゃんに無理矢理仕向けられているんだからね!
姉の声がどんどん大きくなり、響いて、頭が痛くなる。
息ができない。首を絞められているようだ。
真っ暗な闇の中で、何も見えない。
薄れゆく意識の中で、姉の声がはっきり聞こえた。
――ねえ、ミチカちゃん。一緒に死んじゃおうよ。
一瞬だけ、意識が落ちた。
しかし、まばゆい光に目がくらみ、思わず目をつむった。
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