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母さんに正式に紹介するつもりだ。
『(着信音)「母さん📲」』
『(ピッ)なぁに?』
『弘樹、何か隠しているでしょう。』
『彼女のこと?』
『彼女いるの。』
なぜか、消え入るような声で話す母さん。まさか、反対なのか?どんな子かも見ずに?
『連れてきなさい。』
いきなり威勢良く喋るから、少し驚いてしまった。さっきのは決断の前の迷いだったのか...
『分かった。連れてくるよ。今日でいい?』
『良いわよ。しっかり見定めてあげるから。』
『迷惑だけはかけんなよ。僕が彼女にいやがられたら元も子もないから。』
『それは心配ないわよ。』
『わかった。もう切るからな。(終了音:プー)』
『ヒロくん、どうしたの?』
『母さんが、由紀を連れてこいって。いいかな?』
『うん。やっと紹介するんだね。私の両親にはすぐ挨拶できたのに、あなたの両親は結構厳格なんだね。』
『違うよ。僕が恥ずかしかったのと、両親は共働きだから忙しいだけだよ。二人とも仕事の日は夜中まで帰ってこないしね。』
『じゃあ、ヒロくんちに行こう。』
『ああ。』
なんだかんだ言って、家に帰るのは楽しみだ。母さんも父さんもきっと由紀を気に入ると思うから。どんな反応するかな...だって、由紀は可愛いし、優しいし、僕のことを良くわかってるし、うまく依存的でもない関係を築けてる。
でも、少し緊張しているのか、家のドアはいつもより少し重かった。
『ただいま。』
『おかえり...そこにいらっしゃるのは彼女さん?』
『お母さんですか、弘樹さんとお付き合いさせていただいています、前川由紀と申します。よろしくお願いします。』
『可愛いし、礼儀正しい子ね。でも、うーん、どこかで見た顔な気がするわね...』
『母さん、高石あかりだろ?ドラマで見てて可愛い子だってずっと言ってたじゃん。』
『そうそう、高石さんに似てるわよね。』
『え、初めて言われました。ありがとうございます。』
『まぁ、上がって。』
いつもの家なのに、初めて彼女を紹介すると思うと特別な場所に足を踏み入れているような感覚になる。なんてったって、僕にとって初めてできた彼女だし、当然、彼女を家族に紹介するのも初めてだから。
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